今年3月に開催されたSXSWでは、AIによるミュージシャンの作曲支援プログラム「Flow Machines」が注目を集めたことは記憶に新しいが、最近、話題になっているのが、AIが作曲した音楽を放送するYouTubeチャンネルだ。
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「DADABOTS ᴏғғɪᴄɪᴀʟ」ではAIのDADABOTSが作曲したデスメタル、マスロックを放送。AIの開発は、アメリカのバークリー音楽大学出身のミュージシャンで技術者のCJ CarrとZack Zukowskiが行なっており、音楽をディープラーニングさせることでAIにデスメタルを作曲させているというから驚きだ。実際のチャンネルでは激しいいかにもデスメタル風のギターリフや低い声のヴォーカルフレーズも入った曲が常に再生されており、ドラムのパターンなどもかなりしっかりしたものになっている。
このプログラムは、学習用に用意された楽曲を小さく区間分割し、前のセグメントから次のセグメントを予測。実際の楽曲のセグメントとAIが予測したセグメントを比較することでディープラーニングしながら作曲を行なっていくという。またDADABOTSはこれまでにAepoch、Battles、Meshuggahといったメタルやエクスペリメンタルなバンドの音楽を学習しており、それらのバンドに基づき作曲した曲を収録したアルバムも制作している。
ちなみにYouTubeチャンネルで放送されている曲は、カナダのテクニカルなデスメタルバンド、Archspireの音楽を学習したものが元になっている。これは当初、DADABOTSが作曲したほとんどの曲があまり良い出来でなかったものの、Archspireを学習させた曲はそれらに比べて安定していたことがきっかけ。またそういった結果が生まれたことに対し、開発者はArchspireの音楽がハイテンポだったため、AI作曲を安定させ精度を高めたのでは? と予測している。
このようにAIを駆使した音楽制作の可能性は日々高まっている。気になった人は是非、YouTubeチャンネルをチェックして、元となったバンドの音楽と比較してみては?
written by Jun Fukunaga
photo: Cris Feliciano