Written by ☆Taku Takahashi (twitter ID: @takudj )
いやー、『アベンジャーズ/エンドゲーム』本当に最高に面白かったですね!物語が盛り上がってる中、重要なキーワードの「タイムトラベル」これが割と複雑で難しいって思ってた方や、矛盾が生じてない?って思っている人たちもいます。ルソー監督たちも #DontSpoilTheEndgame は月曜日から解禁してもいいよ、と言ってたので、あえてネタバレありで複雑だった「タイムトラベル」を解説します。まだ観てない人は大至急映画館へ行って観てきてください。
まずはハルクことブルース・バナー博士(厳密にいうとプロフェッサー・ハルク)とアントマンのやりとりで、タイムトラベルについて重要な台詞を言ってます。これは字幕では出てなかったのですが「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムトラベルはでたらめなの?」って言ってるんですね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムトラベルは「タイムトラベラーが本人の祖父を殺したら、旅人本人が消えてしまう」という仕組みなんですが、それはマーベルシネマティックユニバース(以下MCU)の量子物理学ではありえません。
ウォーマシンことローディが「サノスが赤ちゃんの時に殺しちゃうのはダメなの?」って不適切な質問をした時、ブルースが「過去へ戻って歴史を変えたとしても、自分らが生きた歴史は変わらない。もし過去へ旅をすると、その過去が未来になってしまう。元の現在が過去になってしまう。新しくできた未来はその過去となってしまった現在は変えられない」と説明をしてきます。なんのこっちゃ?かと(笑)。これを簡単に説明すると、過去へ戻って歴史を変えてしまった瞬間に、新しいタイムラインが生まれる。木の枝が一つ増えるかのように。絵で説明するとこういう感じ。
一度起こってしまった自分の歴史はそのままで、新しい歴史が枝分かれするんですね。歴史が変わったタイムラインはもちろんハッピーになり得るんですが、結局自分らが通ったものは変わらない。自分らの歴史は変えられない。ゲーム・オブ・スローンズ 的に言うと「インクはすでに乾いている」ってやつと一緒です。あと、アニメ『ドラゴンボール』もこれと同じセオリーで成り立ってます。MCUの世界でいうと映画『ドクター・ストレンジ』でモルドがDr.ストレンジに「時を無闇に操作しようとすると、タイムラインに新しい枝が生まれてしまい、空間パラドクスが生じたりタイムループが生まれてしまう危険がある」と注意しています。タイム・ストーンを扱った映画だけあって、このタイミングですでに枝分かれの背景設定は決まってたんですね。
過去へ戻って歴史を変えても何も効果が無いと気づいたアベンジャーズのメンバーは別の解決方法を思いつきます。インフィニティ・ストーンを集めて、もう一度消えた人たちを取り戻そう。ただ、サノスに全ての石は破壊されて無くなってしまっている。なのでインフィニティ・ストーンを過去に戻って全てを集めちゃおう。というか盗んじゃおう。そしてうまくいったら石を元のところに戻そう。そんな作戦でした。
これをわかりやすく説明してくれているシーンはハルクとエンシェント・ワンの会話です。彼女は枝分かれの説明をしつつ、タイム・ストーンを渡してしまったら彼女たちのタイムラインでラスボスのドーマムゥを倒せなくなってしまうので一度は拒みます。ハルクがちゃんと借りた時間に戻って一瞬も消えてなかったようにすると約束しつつも、作戦が成功しなかったら戻ってこない危険性があると引き続き拒みます。映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でドクター・ストレンジがサノスに無条件で渡したのを知って、最終的に石をアベンジャーズに託します。
なんだかんだで、全ての石を集められたアベンジャーズチーム。このタイムトラベルでかなりの数の枝分かれを作ってしまいました。もし石を戻さなかったらどんな未来ができてたかをまとめます。
『アベンジャーズ』の枝(2012 年)
タイム・ストーン(アガモットの目):ドクター・ストレンジがドーマムゥを倒せない未来が出来てしまう。
マインド・ストーン(ロキの杖ことセプター):クイック・シルバーとスカーレット・ウィッチ、ウルトロン、ビジョンが誕生しない。
『ウィンター・ソルジャー』前のタイミングでヒドラの弱体化の可能性もあります。
スペース・ストーン(テッセラクトこと4次元キューブ):チームが失敗してロキに渡ってしまう。ということでロキが新しい暴走をする可能性。いや、なんかするだろうな。ディズニー・プラスでロキのテレビ・シリーズが発表されていますが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で死んでしまったんで、このパラレル世界から繋がったら面白いかもですよね。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』から数年あとにできた枝(1960年代?)
スペース・ストーン(テッセラクトこと4次元キューブ):キャプテン・マーベルが誕生しない。初代アントマンの誕生が遅れる可能性。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の枝(2014年)
パワー・ストーン:スター・ロードが石をゲットできないままアベンジャーズと行動をする。ガーディアンズが結成されない。ドラックスは刑務所にいたまま。異変に気付いたサノス、サノス軍、ネビュラ、ガモーラがこのタイムラインから消えて僕らのMCUタイムラインへ登場する
ソウル・ストーン:ガモーラが『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で生贄にならない。
『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』の枝(2013年)
リアリティ・ストーン(エーテル):ソーがハンマー(ミョルニル)を持ってないから相当不利になる。マレキスによってロンドンを攻撃にいけないかも。
これらの枝が生まれないよう最終的にキャプテン・アメリカが各インフィニティ・ストーンとミョルニルを盗んだ時代に戻しにいきます。自分らが体験した過去を変えられないのに何故、過去へ残ったキャプテン・アメリカがおじいちゃんとして戻ってこられたのか?色々な説が飛び交ってますが、1番有力なのはこれ。石やハンマーを全部、元の時代に戻したあと、キャプテン・アメリカは自分の生きたい人生を取り戻すために1950年代(くらい)で生きる道を選びます。これは当然、新しいタイムラインの枝を作ってしまい、僕らのタイムラインと違う世界に住んでいることになります。すなわち普通だったら最後のあのシーンに出てくることはありえない。そのまま別の枝に住んで「愛する人と暮らした」キャプテン・アメリカはそのタイムラインでやるべきことを色々とやっていって老いたあと、持っていたクオンタムGPSを使って自分のタイムライン(すなわち僕らのタイムライン)に戻ってきます。そこで自分がしたかった人生を送ったことを友人たちに伝え、最後に盾を友人に託す。当然この盾は枝分かれした世界で作られた盾だと思います。
ただ一つ大きな謎が生じます。どうやってスペース・ストーンをテッセラクト(4次元キューブ)に戻したり、マインド・ストーンをセプターに戻したのか?あなたはどう思いますか?僕はキャプテン・アメリカが、オーディンたちの技術に頼ってみたとか想像しちゃいます。あと、ソウル・ストーンを戻す時にレッドスカルと再会するってことですよね。二人がどんな会話をしたのかとか想像すると楽しいですよね。
あと、もう一つ。ピム・パーティクルズが一人分しかなかったのに、どうやってサノスたちは『アベンジャーズ/エンドゲーム』の時代に戻ってきたか?これはまず、映画ではあまり伝えられてないんですが、サノスって強いだけでなく実はすごく科学の知識にも強いんですね。そこに側近のエボニー・マウもいるんで、ネビュラから没収したピム・パーティクルズを複製しまくったんだと思います。
ここまで、細かく説明しましたが、ぶっちゃけこの映画は理屈なしに面白かったと思います。3時間と、映画としては長いという理由でトイレ問題とかもありましたが、結局余裕でそのまま観られちゃいました。11年かけて作ってきた主人公たちの成長、ハラハラする展開、友情、理念、メカ、コメディ要素。SFの概念そのものを変えていった作品だったことは間違いありません。MCUのすごいところは一度映画館で観るだけでは満足しないところ。観るたびに新しい発見や、逆によくできすぎてるんで、粗探しとかもしちゃったり。僕もまた観にいっちゃうと思います。タイムトラベルのことをなるべく簡単に説明しましたが、間違っているところや気づいたところ、別のセオリーがあったら是非僕のツイッターでも声をかけてください。
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Photo:©Marvel Studios 2019