今回はBandcamp、Soundcloudシーンでメキメキと頭角を表すラッパーを3名ピックアップ。
最初に紹介するのはワシントンDC出身のSa-Roc(サ・ロック)だ。彼女はアングラヒップホップの大御所レーベルRhymesayers(ライムセイヤーズ)と契約している数少ない実力派のラッパーで、現在はアトランタをベースに活動しているようだ。
彼女は2020年1月31日にBandcamp上で新曲Hand of Godをリリース。Sa-Rocは以下のようにコメントしている。
「この曲は、人工的なものばかりが蔓延している世界で、真実を証明する必要があるという考えから制作した」
このコメントのとおり90’sテイストのコンシャスなリリックに、ハスキーで力強いラップだけでも十分な存在感を示すが、フックではさらっとソウルフルなボーカルを披露している。
Sol Messiah(ソル・メシア)のプロデュースによるトラックは、優しい浮遊感と行進するような力強いグルーヴが同居している。所属レーベルであるRhymesayersのオーナーSlug(スラグ)のグループAtmosphere(アトモスフィア)の一連の作品や2000年代初頭のアングラヒップホップの質感だ。
次に紹介するのはカリフォルニアをベースに活動するラッパーであるRuby Ibarra(ルビー・イバラ)。彼女はフィリピンからの移民で、英語の他にフィリピン語でもラップしている。90年代を思わせるリリカルなラップスタイルは、群を抜いた実力を見せている。
ジャジーなトランペットのループが印象的なAlways Be My Maybeは、直球で90sアングラヒップホップを思わせながらも、流行りの極端にLo-Fiな質感ではなく現在のサウンドにアップデートをかけたような好トラック。ビートを担当するのはカリフォルニアのOJ THE PRODUCER(オージェイ・ザ・プロデューサー)。彼に関する情報は少ないが多数のビートをネット上で販売している。サンプリング的なタフさとクリーンで生音のような質感を両立するスタイルでTrapからBoombapまでストックがある。ビートを探しているラッパーは彼のオフィシャルサイトを訪ねてみよう。
Ruby Ibarraのアルバムリリースは2017年の『Circa91』が最新となっているが、Apple MusicでリリースされたNadine Lustre(ナディーン・ラスター)とのシングル「No 32」も秀逸なトラックだ。
彼女の呼びかけで結成されたフィリピン系アメリカ人バンドのThe Balikbayans(ザ・バリクバヤンズ)とのライブもYoutubeにアップされている。
2020年3月3日に『Godspeed:Baptism』と言う名前のアルバムをリリースしたNaya Ali(ナヤ・アリ)はエチオピア生まれで、現在はカナダのケベック州をベースに活動するラッパーだ。ケベック州はフランス語圏なので、フランス語のラッパーも多いのだがNayaは英語でラップしている事もあり世界的な成功が期待されている。
『Godspeed:Baptism』は全体を通して感傷的でドープなビートが特徴だ、一度聴いたら忘れられなくなるようなNayaのかすれるような気だるい声がズブズブとダークな世界を表現しながら、4曲目のFor Yuhのようにキャッチーな曲も収録されている優秀なアルバムである。
フロアバンガーとなりそうな存在感抜群の2曲目「Get it Right」でTrapビートをプロデュースするのは、Nayaと同じくケベック州をベースに活動するBanx & Ranx(バンクス・アンド・ランクス)だ。彼らは、Gorillaz(ゴリラズ)のリミックスやSean paul(ショーン・ポール)のプロデュースでも頭角を表している注目株である。
そして、アルベムのタイトル曲でもある「Godspeed」のビートは、Kevin Figs(ケビン・フィグス)のプロデュース。アルバム中で随一のドープネスが感じられるオススメの一曲だ、クラブでの盛り上がりも想像できる。
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written by Yui Tamura
source:
https://sa-roc.bandcamp.com
https://rubyibarra.bandcamp.com
https://nayaali.bandcamp.com
photo:
https://twitter.com/sarocthemc
https://rubyibarra.bandcamp.com
https://nayaali.bandcamp.com