レビュー:『バッドボーイズ フォー・ライフ』Fワード控えめ、味濃いめなコンビの17年振り大活劇

【bfm映画部】Bad boys bad boys Watcha gonna do〜♪whatcha gonna do When they come for you♪
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2020.02.18 11:00

Written by TOMYTOMIO


2003年の『バッドボーイズ2バッド』から17年振りの続編『バッドボーイズ フォー・ライフ』を観てきた。いきなり“2”から“4”になったかと思って、“3”いつやってた? って感じだったんだけど、“FOR LIFE”ってことね。ハリウッド版「あぶない刑事 FOREVER」だね。以下、レビュー。





ジジイ上等! 雑食クライムアクションコメディ『バッドボーイズ フォー・ライフ』はマイルドな味付けで濃いキャラが引き立つ痛快作


『パラサイト 半地下の家族』が話題だ。オスカーで作品賞、監督賞を含む4部門を受賞。カンヌのパルムドールとのオスカー作品賞のW受賞は実に64年ぶりだという。アジア映画としては初の快挙である。まさしく歴史的偉業を達成した『パラサイト 半地下の家族』は、個人的にもすごく楽しめた。(同じく社会格差や分断をテーマとし、随所に共通点も見いだせる『ジョーカー』は、高尚かつオシャレすぎて僕にはあまりハマらなかった。ホアキン・フェニックスが素晴らしい俳優であることに異論はないです)


さて、年明けから『フォードVSフェラーリ』、『パラサイト 半地下の家族』と見応えのある作品を続けて観たので、何も考えずにスカっとできる映画が観たい! と思っていたら、『バッド・ボーイズ』シリーズ最新作『バッドボーイズ フォー・ライフ』が公開。


公開前は正直、不安要素がいくつもあった。主には監督がマイケル・ベイじゃないこと、そして、実はもっと早く公開される予定だったこと。2017年公開予定で進められていたプロジェクトはそれまで監督が決まらなかったり、配給元のSONYが製作開始をOK出さなかったり、遅れること3年、やっと公開までこぎ着けた作品である。それでもいざフタを開けてみれば、やっぱりむちゃくちゃ面白い。劇場でゲラゲラ笑ってしまった。2020年1月17日、全米3775館で公開された『バッドボーイズ フォー・ライフ』は公開初週末に6250万ドルを稼ぎ出し、週末興行収入ランキング初登場1位をマークしている。




トラブルが服を着て歩く『バッドボーイズ』コンビ


『バッドボーイズ』はマイアミ市警戦術麻薬捜査部隊「TNT」に所属する、ハデでオシャレで女ったらしのマイク・ラーリー(ウィル・スミス)と同じくTNT隊員で、マイクの相棒、ひょうきんでマヌケだがここぞって時には頼もしいマーカス・バーネット(マーティン・ローレンス)のバッド・ボーイズコンビがマイアミで巻き起こる麻薬事件に立ち向かうクライムアクションコメディシリーズ。“戦術”とは名ばかりで、2人が動くといつも街に大きな被害が出てしまう。移動する災害のようなどハデな銃撃戦、カーチェイスを繰り広げるのがお約束である。







シリーズを通じて描かれる“家族”と“相棒”


『バッドボーイズ フォー・ライフ』は冒頭でマーカスに孫が生まれ、おじいちゃんになるところから幕をあける。『バッドボーイズ2バッド』で、初デートからマーカスとマイクにさんざんドヤされた彼氏が、困難を乗り越えマーカスの娘と結ばれたのだ。孫が生まれたことにより、引退を強く意識するようになったマーカス。しかし、2人で危険な犯罪捜査に立ち向かっていこうとするマイク。次第に、高校時代から“RIDE TOGETHER DIE TOGETHER BAD BOYS FOR LIFE”を誓い合ったマイクとマーカスの摩擦が大きくなっていく(まあいつものことだけど)。


表現の違いこそあれ、『ワイルド・スピード』シリーズやそれこそ先述の『パラサイト 半地下の家族』でも、“家族”という最小単位のコミュニティを守るために主人公たちが奮闘する姿が描かれるが、『バッド・ボーイズ』シリーズでも共通して、“家族”が重要な鍵を握る。独身者のマイクと家庭を持っているマーカスという2人の間で生じる、“家族”に対する価値観のズレ、それによって起こる衝突が面白おかしく、時に感動すらしてしまうエッセンスとなって劇中に活きてくる。


オフィシャルパンフレットのインタビューでウィル・スミスは


「衝突や言い争いは僕にとって非常に大切な要素だよ。(中略)そこには長年連れ添った夫婦に見られるようなバイブスが少し含まれている(笑)僕にとってそれこそが失いたくない大事な要素なんだ。」


と話している。そんなウィル・スミス演じるマイクは過去の出来事からピンチに陥り、今まで目を向けて来なかった過去と、“家族”と向き合うことになる。




『バッドボーイズ』に新しい風を吹き込む新鋭監督


“家族”を軸とした物語に加えてもう一つ、作品の見所になっているのが新しい世代の台頭である。シリーズお馴染みのブチギレ警部ハワード(ジョー・パントリアーノ)がハイテクチームAMMO(マイアミ・ハイテク捜査班)を創立。そこにいるのは、最新のハイテク設備と緻密な“戦術”を駆使する若いメンバーたちだ。昔気質の乱暴捜査を続けるマイクとマーカスは老害扱いされるという、世代間の対立も描かれているのが今っぽい。 ヴァネッサ・ハジェンズ演じるケリー、マイクの元恋人でAMMOの司令官リタ、身体はガチムチコマンドーなのに頭脳明晰なエンジニアというギャップが特徴的なドーン、生意気なプレイボーイ捜査官レイフなど、個性的なメンバーもそれぞれ魅力的。




17年振りの続編を監督するのはベルギー出身のアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー。オフィシャルのプロダクションノートいわく、前2作を監督したマイケル・ベイとともに『バッドボーイズ』のほか、『ザ・ロック』『アルマゲドン』などの名作を世に送り出してきたプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーをして「新作のためにずっとインプットしていた」という若手監督コンビである。彼らは今後、エディ・マーフィーによるポリスアクションの金字塔『ビバリーヒルズ・コップ』(ジェリー・ブラッカイマー製作)の20年振り(!!)の新作を撮る予定がある期待の新鋭。今作では『バッドボーイズ』シリーズに脈々と流れる“ベイヘム”(マイケル・ベイ作品のど派手な特徴を言い表した造語)を活かしつつ、アップデートすることに見事成功したといえる。




DJ Khaled監修のサントラもマイアミバイヴスたっぷり


前作ではP. DiddyがNellyとMurphy Leeを迎えた「Shake Ya Tailfeather」が劇中に使われ、ヒットとなった。今作『バッドボーイズ フォー・ライフ』のサントラはエグゼクティヴ・プロデューサーに舞台となるマイアミ出身のヒットメーカーDJ Khaledを迎え、ラテン&レゲトンムードたっぷりなMeek MillとFarruko「UPTOWN Ⅱ」を始め、BLACK EYED PEAS、J. Balvin、 Buju Banton、Rick Ross、Daddy Yankee、Pit Bull、Jaden Smithといった豪華なメンツが集結。マイアミの街から、メキシコに至る物語を盛り上げる。DJ Khaledは劇中にも出演。また、ウィル・スミスとかねてより交流のあるレゲトンアーティストでありサントラにも参加しているNicky Jamも敵組織のZway-Lo役で出演している。両者とも笑いを含んだ見せ場のある役どころを熱演。








『バッドボーイズ』入門にピッタリ


『バッドボーイズ2バッド』は147分の本編に対し、153個のFワードが飛び出す作品だった。1分に1回以上、Fワードを喋っていることになる。そんな調子でアタマからずっとブッとんだテンションで突き進んでいく『バッドボーイズ2バッド』と『バッドボーイズ フォー・ライフ』を比較してしまうと、確かに物足りない印象を受けるかもしれない。Fワードの数だけ比べてみても海外の記事によれば今作は47個〜48個と『バッドボーイズ2バッド』の約1/3程度にとどまっている(これは映画館で数えたため、正確ではないらしく、セルが出てから確実な数字が出るだろうと書かれている)。他にも、いきなりキッチンでバラされた人間が樽詰めにされたり、死体の中に大量のMDMAを忍ばせたり、敵の上半身だけ吹っ飛んだりと過激なスプラッタ描写が際立つ『バッドボーイズ2バッド』と『バッドボーイズ フォー・ライフ』ではトーンに明らかなギャップがある。


角が取れてマイルドになった(おそらく確信犯的にそうしているのだろう)印象があるが、その分、マイク&マーカス以外の新キャラたちも際立っていて魅力たっぷりだし、“老い”を逆手にとってネタにしたり、円熟味を増したマーカスとマイクのさすがの掛け合い漫才や、迫力のカーチェイス、ハデな銃撃戦といった『バッドボーイズ』らしさも健在だ。見終わったあとには、『バッドボーイズ』のテーマである、


「Bad boys bad boys Watcha gonna do〜♪whatcha gonna do When they come for you♪」


というBob Marley の「Bad boys」のメロディがしばらくの間、脳内再生されることになるし、口ずさんでしまうこと必至。前作2作を観ていない人でも充分に楽しめる作品で、むしろ、今作を観て過去作品をより楽しく観賞できる『バッドボーイズ』入門に最適の1本。いかに『バッドボーイズ2バッド』がどうかしちゃっているのかが分かるはずだ。


「これで最後」的な匂わせプロモーションをしていたが、予想以上のヒットを受けて、続編製作の企画がすでに動きだしているらしい。これでマイケル・ベイ抜き(実は今作でカメオ出演している)でも、ウィル・スミスとマーティン・ローレンスの2人がいれば『バッドボーイズ』になりえることが証明された。続編も作れるような伏線が張られていたけど、個人的には何がなんでもウィル・スミス、マーティン・ローレンスが続投してくれることを願う。こうなってくると、「ラッシュアワー」もそろそろリブートしてもらって、久々にクリス・タッカーを劇場で観てみたいと思うのは僕だけだろうか。




▶『バッドボーイズ フォー・ライフ』


リッチでイケメン、独身生活を謳歌する敏腕ベテラン刑事のマイク。妻に頭が上がらず家庭優先、仕事はイマイチだが、最高の相棒マーカス。マイアミ市警の名物コンビ≪バッドボーイズ≫の2人だったが、マーカスは家族のことを想い危険と隣り合わせの仕事から引退を決意する。そんな中、マイクは新チームへの配属を命じられ、若手エリート捜査官で結成されたAMMO〈マイアミ市警特殊エリート部隊〉のメンバーたちと新たにチームを結成することに。生意気な若手と衝突を繰り返すマイクだが、新しい事件の捜査を進めるうちに何者かに命を狙われてしまう。さらには容赦なくマイクの周囲にまで凶弾が―。※R15+


監督: アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー

出演: ウィル・スミス、マーティン・ローレンス

上映時間:124分


バッドボーイズ フォー・ライフ公式サイト:https://www.badboys-movie.jp

ソニー・ピクチャーズ映画部公式Twitter:https://twitter.com/SPEeiga


source:『バッドボーイズ フォー・ライフ』オフィシャルパンフレット

https://www.cinemablend.com/news/2488687/bad-boys-for-life-f-bombs-less-than-bad-boys-2

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_films_that_most_frequently_use_the_word_fuck

https://www.boxofficemojo.com/weekend/2020W03



photo:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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