ラッパー・Tohjiの魅力とは?

ラッパー・Tohjiの人物像や魅力に迫る
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2020.03.30 00:05

ラッパー・Tohjiの人物像や魅力に迫る


ラッパー・Tohji(トージ)はロンドンで生まれて東京で育ったという経歴の持ち主である。中学生の頃からラップに本格的にハマり始めて、現在は美大へ通っている。地元からのし上がっていく従来のラッパーとは違いYouTubeやSoundcloudなどに作品をアップして世界へと発信していくスタイルである。ラッパー・Tohjiの魅力の本質に迫ってみたい。



ラッパー・Tohjiとは?


ラッパー・Tohjiは、1996年にロンドンで生まれる。本名は不明。ロンドンで誕生後、3歳ごろに東京に移り住み横浜で育った。日本生まれ日本育ちではないというバックグラウンドを持つため、Tohjiは他のラッパーに見られるような自分の出身地をリスペクトしたりアイデンティティにするような傾向は顕著ではない。自分の根源となる「地元」を持たないというTohjiのスタイルは、狭い世界で完結することを許さず常に世界に目を向けていく独自のスタイルを構築していく。


学生自体に聞いてきたのは、主にEminem(エミネム)、50 Cent(50・セント)妄走族、鬼、キングギドラ、Dragon Ashなどだった。高い偏差値を誇る有名校である麻布高校出身ということで頭脳明晰だったのだが、数々のやんちゃを起こしたのと学内選挙で敗退したのを機に高校を中退している。高校を中退した後は自宅で音楽の制作活動に打ち込み、ラッパーとして本格的な活動を行い始めた。ラッパーとしてのかたわら武蔵野美術大学に美大生として通い、感性を磨いている。大学では気の合う仲間とも巡り会い、一軒家を借りてシェアハウスを行っている。このシェアハウスでは楽曲の制作を行ったり、遊びに来た友人と交流をしたりと活動の拠点にもなっている。


Mall Boyz(モール・ボーイズ)はTohjiとラッパーのgummyboy(グミボーイ)、DJのstei(ステイ)、アートディレクターのSahashiの4人で作られたクルーだが、この中の1人gummyboyはシェアハウスに遊びに来たことがきっかけでラップを始めメンバーになったいきさつがある。このようにTohjiにとってシェアハウスは仲間との出会いの場でもあり、重要な意味合いを持っている。そんなTohjiに注目が集まったのはAbemaTVでのヒップホップオーディション番組である『ラップスタア誕生』への出演だ。このオーディションの特徴は、ライブによるラップバトルではなく音源として感性された作品を競わせるというスタイルだ。より緻密で完成度の高いリリックが求められる点にある。この番組をきっかけとして知名度を上げたTohjiは美大生ラッパーとして注目された。


急激に世間の注目が集まったが、その時にはまだTohjiの情報やリアルな姿は十分に共有されていなかった。そのため多くの噂が流れ、Tohjiの実像を多くの人が求める形でライブへの集客が高まっていった。Tohjiのリリックは勢いがあり彼独自の世界観が描かれている。常に新しい切り口で世界に目を向けている日本のラッパーの活躍が今後も楽しみだ。



曲のテイストや特徴


Tohjiの曲の特徴としては、今までの日本語ラップにはなかった爽快感と疾走感がある。特にMall boyzの「Higher」は代表曲として多くのファンに愛されている1曲だ。中でも強烈な印象を聞き手に与えたのが「成し遂げて死ぬ」というリリックだ。このリリックに今までのラップシーンにはなかった新しい風を感じたラップファンも多数いた。それまでのラップの目的は富、つまり金。成り上がって大金をつかみ取るというハングリー精神が根底にあった。リッチになってやるぞ、大金持ちになって見返してやるぞというのがラップの世界でのいわば定番だった。


しかし、この曲の中のリリックでは「成し遂げて死ぬ」という、真逆とも言える信念を突き立てているのが大きな特徴だ。このリリックには、成功すれば死んでも構わない、命を賭してもやり遂げたい何かがあるという熱い思いが込められている。これまでのラップシーンにあった価値観を覆したとも言えるリリックだ。このリリックでは目的は金ではない、成功つまり名声だと告げている。金よりも命よりも、名声を渇望するリリックが多くの聞き手の心に刺さったのだ。


2019年8月には、ファーストとなるミックステープ『angel』がリリースされた。ビートはMURVSAKIやZeph Ellis(ゼフ・エリス)が手がけるなど、制作陣も豪華な顔ぶれだ。制作チームのスタッフもTohjiの才能やカリスマ性に引き寄せられて集結している。ジャケット写真やMVなどもTohjiを中心として多彩なクリエーターがひとつになり、このミックステープの制作に携わっている。閉塞された世界を切り開いていく天使というのが今回の大きなテーマである。Tohji自身の背中にも天使の羽のタトゥーがあることから、天使という神秘的な高位の存在に惹かれている一面が垣間見える。


収録されている楽曲も、日本語と英語の入り混じった多彩なフロウが印象的でTohji自身の魅力を引き立てている。「Snowboarding」や「Rodeo」、「HI-CHEW」などの楽曲が収録され、彼独自の世界観や創造力を十分に感じることができる。「on my own way」は男性らしい愛情の捉え方を感じ取れる楽曲で、ラストの「miss u」は恋人と間に生まれる心の揺らぎなどを表現した楽曲だ。よりエモーショナルな心象風景を作り上げているTohjiの手腕に舌をまく作品だ。




written by 編集部


photo: https://www.youtube.com/watch?v=h4rtxlz5f24


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