昨今のミュージックシーンでアーバンミュージックという言葉をよく耳にするが、具体的にどういうジャンルなのかわからない人も多いのではないだろうか。今回はそんな疑問に答えるためにアーバンミュージックについて紹介する。
アーバン(urban)とは、英語で「都会」、「都市」、「都会的な」、「都市的な」という意味の言葉である。「アーバン+〇〇」と組み合わせて使われることが多く、この場合は「都会的な〇〇」という意味になる。例えば「アーバンウェア」は「都会的な服装」という意味で、町中で着られることを目的とした服のことであり、作業服や仕事着と比べて洗練され、オシャレなイメージとなる。現在「アーバン+〇〇」という言葉は増加傾向にある。これはアーバンという言葉がスタイリッシュで華やかな都会を連想させ、商品やサービスのイメージを向上させるため、企業のイメージ戦略に用いられているからである。
アーバンミュージックとは都会的なイメージを持った音楽ジャンル、もしくは最新型の音楽ジャンルに向けられる言葉である。
またブラック・ミュージックを置き換えた場合もある。これはブラックという言葉が肌の色を連想させ、人種差別的であるとの判断からである。アーバンミュージックはロック、クラシック、ジャズ、テクノのように確立された音楽ジャンルではない。「中間コードが豊かで躍動感がある」とか、「ホーンセクションを多用する」と言った音楽上の定義も存在しない。アーバンミュージックにあるのは「都会的」「新しい」というイメージであり、何をアーバンミュージックとするかは言葉を使うものの感覚に委ねられている。同じ時代の同じ国であっても人によってアーバンミュージックのくくりは異なり、同じ音楽がアーバンミュージックになったりならなかったりする。また、定義が曖昧でイメージ先行であるが故に特定の音楽が「アーバンではない」と証明することも難しく、アーバンミュージックの氾濫に拍車をかけている。
人の印象に残ることがあれば、アーバンミュージックのイメージも変化する。例えば著名なアーティストやヒット作がアーバンミュージック(アーバン系)と呼ばれると、その特徴がアーバンミュージックの特徴となる傾向がある。
アーバンミュージックは反応的かつ流動的な音楽ジャンルであり、時の流れと共にその実体は変化していく。それ故に、今年のアーバンミュージックと同じ特徴を持った音楽が、10年後もアーバンミュージックと呼ばれる保障はない。このことはアーバンという言葉の意味を考えれば間違っていない。アーバンとは「都会的」という意味であり、都会は流行の最先端に位置し、それは常に変化していくものだからだ。
アーバンミュージックの起源は1930年~1940年台のアメリカ、都会的なジャズミュージックの華やかなる頃である。当時のジャズミュージックは綿花で財を成したコットンクラブやギャングを相手にしており、豪華にショーアップされたそれは庶民には手の届かない憧れの的であった。この憧れ、理想と現実のはざまに生まれた「都会的な華やかな暮らし」という一種の幻想こそがアーバンミュージックの源であり、またアーバンミュージックの象徴しているものである。全世界的な都市化の流れの中、こうした幻想も都市と共に増加を続け、今日のアーバンミュージック、アーバン〇〇の氾濫へとつながっている。
カントリーミュージック(田舎の音楽)はアーバンミュージック(都会の音楽)の対義語に位置するようだが、実際には無関係である。アーバンミュージックには音楽上の定義がなく、カントリーミュージックと比較することができない。そもそもカントリーミュージックの対極をどのように定義するかが定かではなく、カントリーミュージック以外の音楽ジャンルを全てアーバンミュージックにするのも無意味である。
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Written by 編集部