2018年2月、アメリカのラッパーTyga(タイガ)がアルバム「kyoto」をリリースした。ところが、このアルバムジャケットが大きな話題を呼ぶことになる。ジャケットのアートワークに抗議の声が寄せられたのだ。これは芸術か否か、議論は尽きない。
ラッパーTygaのアルバム「kyoto」は、日本の京都にちなんで創られたものだ。そのジャケットが過激なのである。デザインしたのは、空山基。AIBOのデザインで世界的に有名な、日本のイラストレーターだ。国旗の日の丸をバックに、全身虎柄の全裸の女性が四つん這いで腰を突き出す煽情的なポーズの絵が、卑猥すぎると非難を浴びたのだ。また、背景に日の丸が使われていた事からも、日本を侮辱しているのではないか、との声があがった。対してTygaは、「これは芸術だ」また、国旗については「日の丸ではなく、朝日だ」と主張している。
元々、アートワークでの国旗の取り扱いは難しい。記憶に新しいところでは、2013年に公開された「ウルヴァリン2」のポスターが同様の注目を集めた。それは、ごくシンプルに日の丸がウルバリンの爪で切り裂かれるデザインだった。そんな話題にことかかない「kyoto」だが、AppleMusicなどのカテゴリでは「ヒップホップ/ラップ」ではなく、「R&B/ソウル」に分類されている。
今回はこんな騒動になったが、以前からラッパーTygaがモチーフとしての日本に興味があった事は、過去の作品からも垣間見る事ができる。2017年7月にリリースしたミックステープ「Bitch I’m the Shit 2」のジャケットには、黄色いDUCATIのバイクに乗った男性が疾走する写真が使われている。その背景の壁に「愛羅武勇」「夜露死苦」的に、「愛神力量尊重」と黒スプレーでペイントされているのだ。当て字なのか、単にニュアンスだけでチョイスした漢字の羅列なのかは不明であるが。また、この「Bitch I’m the Shit 2」のリスニング・パーティーがロサンゼルスで開かれた際のスナップには、「爆破」と刺繍されたキャップの他、背中に城の絵と「愛力量尊重」の文字、龍の絵と「爆破」の文字の組み合わせでプリントされた黒いTシャツなどがグッズとして登場している。
「Bitch I’m the Shit 2」にも収録されている「Eyes Closed」という曲がある。このシングルのジャケットは、日本のカルチャーで遊んでいる感満載である。黒と赤で描かれた日本の街風(あくまでも風)を背景に、ラッパー・スタイルのTygaが佇んでいる。そして昔懐かしいワード・アートのような黄色い文字で、「目を閉じて」と日本語で書かれたタイトルが前面にドーン!脇には、これまた日本語で「目をつぶる私は数えることができる」と謎の文章。なんとも面白い作品である。
今更だが、ラッパーTygaのプチ情報を簡単にまとめておく。1989年11月19日生まれ、カリフォルニア州コンプトン出身としているが、実はバレーの裕福な家庭の子供だったという説もある。無名時代に出た番組でのコメントがソースだが、本人は否定している。ラッパーTygaという名前の由来は、オフィシャルでは「Thank You God Always」の頭文字を取ったとなっている。しかし「タイガー・ウッズに似ているから」という理由の方が有名だ。
従兄弟は、ヒップホップ・ロックのカリスマGym Class Heroes(ジム・クラス・ヒーローズ)のTravie Mccoy(トラヴィー・マッコイ)。また、元ストリッパーBlac Chyna(ブラック・チャイナ)との間にできた子供の親権を巡る争いや、人気セレブのカイリー・ジェンナーとの交際(破局)など、ゴシップ誌も賑わせている。
Photo:https://www.facebook.com/pg/tyga/photos
Written by 編集部