アフロマンスが注目のイベントの仕掛け人たちを集め、話題のイベントの作り方についてトークする番組。今回はゲストに福田真美さん(CORONA SUNSETS FESTIVAL)、きださおりさん(TOKYO MYSTERY CIRCUS)、広屋佑規さん(Out Of Theater)をお招きし、「IMMERSIVE 世界観のあるイベントのつくり方」というテーマで話していました。
▶「スーパーオーガナイザートーク by アフロマンス」
放送日:毎月第2木曜日 20:00 - 21:00 O.A.
番組URL : https://block.fm/radios/612
アフロマンス:スーパーオーガナイザートーク、始まりました。今日もたくさん来ていただき、ありがとうございます。最初に番組の説明をしますと、このスーパーオーガナイザートークはこれからイベントを作りたい人、イベントをより面白くしたい人に向けてパーティークリエイター・アフロマンスが注目のイベントの仕掛け人、スーパーオーガナイザーたちをゲストに迎えて企画の作り方から失敗談などいろいろと聞いていこうと思います。
今回はレギュラー放送の第2回目となります。場所は渋谷駅すぐ近くのMAGNET by SHIBUYA109の7階、MAG7で公開生放送中です。ちなみにいま聞いていただいている全国の方。この番組では質問や感想をTwitterで受け付けております。ハッシュタグは「#スーパーオーガナイザートーク」。カタカナでつぶやいていただければ、途中で見てそこから質問とかを拾おうかなと思っておりますので。ぜひぜひよろしくお願いします。
という感じで聞いてよし、つぶやいてよし、渋谷にもなんだったら来ちゃったらいいんじゃない?っていう企画になっておりますので、最後までどうぞよろしくお願いします。
それでは本題に入りまして、今回のテーマは「IMMERSIVE -世界観のあるイベントのつくり方-」。3名のゲストをお招きしております。今回は結構濃いゲストが来ていますのでぜひお楽しみください。まず、お一人目はコロナサンセッツフェスティバルという沖縄でやっている野外フェスの福田さんです。拍手!
一同:(拍手)
福田真美:こんばんは。はじめまして。福田真美です。私はいま、ご紹介いただきましたコロナサンセッツフェスティバルというお仕事がいちばん大きいお仕事で。そのオーガナイズをしているんですけども。それ以外にも、みなさんコロナビールってご存知でしょうか? 知っていただけているとありがたいんですけども……ああ、ありがとうございます(笑)。
アフロマンス:もちろん!
福田真美:実はコロナビールではこのコロナをどうしたらもっともっと美味しく、気持ちよく飲んでいただけるか?っていう究極の瞬間っていうのを設計していて。「This Is Living」っていうのが私たちのタグラインなんです。「これぞ人生だ」っていう。その瞬間にこそコロナビールを飲んでほしいっていうイベントをいくつも企画しているんですね。で、そのうちのひとつがいまご紹介いただいた、たとえばサンセットフェスティバルとかなんですけれども。この冬、1月とか2月は下北沢の高架下、下北沢ケージで2ヶ月間、野外フィンランド式サウナのイベントをやっておりまして。
アフロマンス:ちなみにあのサウナのやつはグローバルでやったりしているんですか?
福田真美:していないんですよ。まだ日本だけなんですよね。
アフロマンス:あれ、日本独自の企画なんですか?
福田真美:そうなんです。日本では去年ぐらいからどんどんサウナの人気も出てきているのと、私たちの「This Is Living」っていう瞬間というのは外に出た時にこそ、その瞬間というものが楽しめるんじゃないかっていう風に思っているので。人間って実は人生の95%を屋内ですごしているんですって。で、それをどうにかして外に出るきっかけというものを与えたいということで、冬に外で飲むビールだとちょっと寒すぎるので。じゃあ、そこにすごいサウナを作って、外気浴をしながらいい1杯、いい瞬間を楽しんでもらえれば……みたいな。そんなことを企画したりしています。
アフロマンス:僕もそのコロナのサウナ、行ったんですよ。あれも結構イカれたイベントだなっていうか。だって本当に寒いんですよね。外の外気温が。
福田真美:ありがとうございます(笑)。寒いんです。2度とかで。
アフロマンス:で、サウナに入るのは全然いいんですよ。最高に温かいんですけども。その後にまた水風呂があるじゃないですか。だから真冬に水風呂に入るっていう……あれ、なかなかないですよね。でも、たしかにフィンランドってそうですよね? 結構雪の中でサウナに入って。さらに自然の川とかに飛び込んだりみたいな。
福田真美:そうですね。そうすると膜ができて、30分ぐらい全然寒くなかったりして。そんな中で飲むビールって結構格別だということで。
アフロマンス:「ととのって、飲む」っていう感じですよね。
福田真美:まさにその通り。おっしゃる通りです。
アフロマンス:本当にそのコロナフェス、僕も2年連続で行っているんですけども。本当に……あ、別に僕はコロナからお金をもらっているわけじゃなくて。本当にリアルに推しているイベントというか。なんですかね? やっぱりコロナというものがあるからこその、その派生で世界観ができるフェスというか。どうしても、フェスってアーティストありきっていうか。「あの出演者が出るから行く」っていう風になりがちなんですけども。
コロナフェスっていうのはもちろん出ているアーティストも素晴らしいんだけども、あの場所に行きたいみたいな。で、僕はまさに2年、行ったんですけども。1年目に行って衝撃を受けて。今年はちょっと「帰ってきたな、このコロナワールドに」みたいな。そういう気分になれるようなフェスなので。どういう風にして考えているのか?っていうのを今日は聞いていきたいなと思います。
福田真美:ありがとうございます。
アフロマンス:そしてお二人目はみなさん、脱出ゲームとか聞いたことある人はいっぱいいるでしょうし、やったことがある人も多いと思うんですけども。東京ミステリーサーカス、そしてSCRAPのきださんです。拍手!
一同:(拍手)
きださおり:はい、よろしくお願いします! 普段は新宿歌舞伎町にある東京ミステリーサーカスという世界一謎があるテーマパークという屋内型テーマパークの総支配人をしたりとか。その傍ら、自分でもディレクターとして体験型イベントやリアル脱出ゲームというものを普段、制作しております。よろしくお願いします。
アフロマンス:ちなみにいつぐらいからやられているんですか?
きださおり:私が企画・制作をしているのはもう8年前ぐらいからですね。もともと京都で大学生をしていた時、フリーペーパーの企画としてやっていて。で、会社になって現在……みたいな。
アフロマンス:本当ですか? 僕も実は大学が京都で。フリーペーパーをやっていて。その頃からSCRAPは知っているんですよね。もはや知らない方も多いかもしれないですけども、SCRAPっていま脱出ゲームで有名なんですが、もともとは京都のフリーペーパーなんですよ。で、本当に、普通のフリーペーパーじゃないんですよね。その頃から謎解きとかもフリーペーパーに入っていた気がするんですけども。変わったテーマで毎回あって。普通に読み物として面白くてすごい人気で。で、加藤さんにも僕、お会いしたこともあって。気づいたらもう世界の脱出ゲームの代表格みたいになっていて……みたいな。
きださおり:そうですよね。こちらも気づいたらなっていました(笑)。
アフロマンス:でももう8年もやられているんですね。
きださおり:そうですね。それこそフリーペーパーの時は、最初は音楽をテーマにやっていて。そこから3回ぐらいで音楽はネタが尽きて。それで毎回、面白い企画とイベントをかならずセットでやるというところで脱出ゲームが生まれていて。で、私は1回、他の広告の会社に就職をしたんですけれども。「東京でオフィスを作るから……」っていうタイミングで「じゃあ、戻るわ」みたいな感じで戻ってから8年っていう感じですね。
アフロマンス:なるほど。音楽も好きなんですね。
きださおり:音楽も好きですね。
アフロマンス:ここはいまアフロと福田さんは音楽側なので。そういう音楽と謎とか、そういうコラボとかもできたら面白いかもしれないですね。もうやられています?
きださおり:でも私も音楽側なので……(笑)。
アフロマンス:ああ、音楽側なの? 謎側じゃないんですか?
きださおり:謎側じゃないんですよ。意外と(笑)。毎回、自分が公演を作る時にはその公演のテーマソングとかもかならずゼロから作って。で、好きなミュージシャンに依頼して、BGMから……まあ60分間のゲームだったらその60分間の音楽+テーマソングみたいなのも作ってその世界観を演出するようにしています。
アフロマンス:ヤバい。今日、話を聞いているとハゲそうなんですけども(笑)。
きださおり:そのアフロが? 嘘でしょう?(笑)。
アフロマンス:実はこの最初の2名のゲストの方は今日、僕は初対面なので。聞きたいことがいっぱいあるなっていう感じなのでぜひぜひこの後も聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。そして最後のゲストは飛ばしまして……。
広屋佑規:おいおい! 待て待て……びっくりしましたよ!(笑)
アフロマンス:Out Of Theaterという、名前の通りなんですけども。劇場じゃない場所……劇場を飛び出してミュージカルとか演劇を展開するというテーマをやっているOut Of Theaterの広屋くんでございます。じゃあ、自己紹介をお願いします。
広屋佑規:はい。Out Of Theater代表の広屋と申します。よろしくお願いします。いま、ご紹介いただいた通り、Out Of Theaterというのは今日のテーマでもある「IMMERSIVE」みたいな没入型のライブエンタメカンパニーみたいなことを最近では謳っていまして。いちばん大きく実施しているのは街中にある商店街を全て劇場に見立て、そこでミュージカルのショーをするという「STREET THE MUSICAL」という企画をありとあらゆる街中で展開しています。
街中×エンターテイメントというものをひとつ、テーマとして持っていて。他の企画もいろいろと街中で仕掛けているのですが、最近はまたちょっと派生をして、それこそアフロさんとも一緒にやらさせていただいているという『東京喰種S』の実写映画化公開記念イベントがあります。『東京喰種』の世界観をとあるレストランで再現するという企画なのですが、その演出を担当させていただいております。という感じですかね?
アフロマンス:はい。まあ広屋くんには質問はないので、本題に……。
広屋佑規:質問してくださいよ(笑)。
アフロマンス:ちなみに広屋くんは前から知っていまして。4、5年前ぐらいに僕が「弟子募集」みたいなブログを書いたら応募してくれて。で、1年ぐらいみっちり一緒に仕事をしたというか。ご存知かどうかはわからないですけど、渋谷のこのマルキューの屋上でバスタブシネマっていうポータブルジャグジーに浸かりながら映画を見るというのを開催しまして。その時、実際に企画から現場までやってもらったのが広屋くんということで。
広屋佑規:そうなんです。ということで今日は元弟子としてここに登壇をさせていただいているので、すごい目線が怖いなと思っているんですけども!
アフロマンス:たぶん面白いことをこの後にいっぱい言うと思うんです。楽しみです。
それではさっそく、トークテーマの方に行きたいんですけども。今日は世界観のあるイベントのつくり方ということで。じゃあ、さっそくなんですけどもコロナフェスをやられている福田さん。普段からその世界観とかっていうものはすごい大事にしている感じですよね?
福田真美:しています。
アフロマンス:どういう世界観を大事にしていて、どういうことに気をつけているかとか。そのつくり方みたいなことのポイントがあれば教えてもらっていいですか?
福田真美:まあフェスに来ていただいているんでおわかりかと思うんですけども。あそこのフェスってなにもないビーチにゼロから建てるんですよね。で、いちばん大事にしているのは、出店をされる方のメニューとか意外にすごい細かいところで。やっぱり夏の沖縄ってすごい暑いんで、物の売れ行きにも増減があったりするんですよ。そうするとやっぱりみなさん、「いま100円引き」とかっていう看板を出したり、「いまだけ500円」とか。結構フェスで見ませんか? そういう光景って。
アフロマンス:ヤバい。たしかにコロナフェスに行って手書きのポップっていうか、あるあるなやつ……残り時間がないんで、赤字でピーッみたいなやつとか、見ないですね。
福田真美:そういうのは一切、申し訳ないんですけども禁止にさせていただいていて。もう全部、字体とか看板とかもこちらで用意させていただいていて。とにかく、どこを見てもコロナであるっていうことが絶対にわかるように、割と細部に気を使うっていうのがいちばんの気をつけているところですね。
アフロマンス:なるほど、なるほど。でも本当にゴミ箱からシャワーから、全部コロナっぽいんですよね。
福田真美:そうですね。トイレの看板とかまで全部気をつけて。
アフロマンス:白いウッドと白い布とかロープとか……たぶんコロナのひとつの世界観のテーマ。あれはグローバルとかでなにか決まっているんですか?
福田真美:そうですね。グローバルで年にだいたい1回ぐらい、世界的にはこういう共通イメージで行きましょうねっていう、まあツールキットというものがダウンロードされるんですけども。それをもとにして「日本ではこういう風にします」っていう。それはそのお手本を見つつ、作り上げていくっていう感じですかね。
アフロマンス:なるほど。僕はコロナフェスに2年行っているので。世界観をつくるっていうことに気づきを得たフェスなんですよ。音楽フェスってさっきも言ったかもしれないけど、どうしてもアーティスト目当てとかになっちゃう中で、その世界にまた帰りたくなる感じ。で、ポイントだと思ったのがちゃんと外部とイベントの会場内が分かれているんですよね。野外フェスって普通は海岸とか分け隔てがないじゃないですか。なんですけど、完全に囲われていて。で、その中身は全部コロナのイメージ。
福田真美:そこの入り口のトンネルみたいなところ、あるじゃないですか。あそこを抜けるともう本当にコロナの世界観がないものは一切排除するっていうことを徹底していますね。
アフロマンス:僕もバーニングマンとか……アメリカの砂漠のフェスがあるんですけど。そこにも何回か行っていて、そのゲートの重要性みたいなものはすごく思っていて。日常の通常の世界と会場内の世界を分けるっていう考えというか。で、そこの入り口がどこなのか。要はこのゲートとかこのカーテンとかこの通路を通ってパッと開けた瞬間に一気に世界が変わる。それは結構世界観の切り替えで僕はすごい大事だなと思っていて。それをそのコロナフェスに行った時、ちょっと言い方はあれですけども。無駄に長いんですよ。その通路っていうか(笑)。
福田真美:そうそう。無駄に長い(笑)。本当にそうです。
アフロマンス:無駄に長い。だからその無駄に長い……フェスの入り口とかってもっとテントが建っていて、長机があって、受付をして「はい、どうぞ」みたいな感じじゃないですか。それがすごい……そこからもう世界観ができていて、ずっと長い道を通って…「長い」って言ってもほどほどですけどね…通っていくと、終わったところで海がバーン!って開けるんですよね。で、それを見た時に「うわっ、ヤバい!」って思って。だからあそこの……もちろん全体的に全部が世界観こだわっているっていうのもあるし。あのゲートがなかなか機能しているなっていう風に思ったというか。
福田真美:本当におっしゃる通りで、普段の自分とは違うスイッチを入れてリラックスしてほしいっていうのもありますし。あそこのゲートを抜けてバン!って海が見えると、海にコロナフェスっていうフロートが浮いていたりして。
アフロマンス:そう。それがおしゃれなのよ。
福田真美:やっぱり沖縄の海って青いので。本当にきれいなんですよね。「なんで都内近郊でやらないんだ?」っていうことはすごい言われたりするんですけども。やっぱり沖縄でやることの意味っていうのは毎年、あの風景を見ると非常に感じますね。
アフロマンス:あと、世界観に付随する話なんですけども、ロケーション。場所っていう話もコロナフェスの場合は結構デカいなと思っていて。その沖縄の空気感とか、本当にあれですね。湿度の感じから入った後にステージの上とかを飛行場が近いんで頭上を飛行機が通っていくんですね。キーン!って。だからアーティストの音楽と飛行場の飛行機の音とかがかぶる感じとかが「ああ、これは東京じゃできないイベントだな」って。東京にそのままセットを持っていってもできないみたいな。
福田真美:そうですね。あの空気感とか世界観はあの場所じゃないとなし得ないなっていう風に思っていて。本当におっしゃる通りであそこじゃなかったらコロナフェスとは言えないかなっていう感じはしています。
アフロマンス:なるほど。ちなみにさっき、サウナという話が出ましたけども。サウナの方はどうしてサウナをやることになったんですか?
福田真美:去年からサウナを実はやっていて。ただ、応募型で抽選で当たった方限定200人、2デイズみたいなので始めたんですね。なんですけど、それがすごい評判が良くて。あとは最近のサウナブームっていうのもあったので、ちょっとロングランでどうにかできる方法はないのか?っていう風に考えて。それで実はコロナだけじゃなくて、他の代理店さんとかエージェンシーさんにも入っていただいて、共同運営という形で今年は2ヶ月間、開催をしました。
アフロマンス:うんうん。そういうリアルイベントに本当にコロナさんは力を入れていますよね?
福田真美:私の個人的な意見で、さっきもちょっとお話をしましたけども。リアルイベントこそパワーがあると思っていて。その時に感動したこととか……たとえば美味しいとか気持ちいとか思ったことって、どこか絶対に心の中に残っているだろうなと思っていて。それでコロナを飲むとやっぱりそれが思い出されるみたいな。普段の日常の中でもコロナにライムを入れる。それがスイッチになって、そのことが思い出されるみたいな経験が作れたらブランドとしてはすごく嬉しいなと思って活動をしているので。その「はあー、あれ、よかったー!」っていう瞬間をひとつでも多く、コロナと一緒に作っていきたいということは心がけていることですね。
アフロマンス:またそのコロナのそもそものブランドイメージが結構あるじゃないですか。ビーチとか夏とか……そういうのがあるのが強いですよね。コロナって。他の飲料ってあんまりないじゃないですか。CMとかもシズルっていうか「美味しそう」みたいな感じはするけど、こういうシチュエーションのビールみたいなのってないから、そういうのは強いですよね。
福田真美:本当にそうですよね。
アフロマンス:ちなみにコロナのブランドを体験を落とし込むと……っていう話がいまだと思うんですけども。逆にきださんの方はなにかコロナみたいなものがあってというよりは、ある意味ゼロイチというか、「こんな世界を作りたいな」とかっていうところから考えている感じなんですかね?
きださおり:完全にゼロイチですね。いま、どんな体験が世の中にあったら面白いのかっていうところから考えていますね。
アフロマンス:たとえば、聞いている方にも教えていただきたいんですけども。こういうネタのこういう世界観をやったみたいな話をいくつか、事例としてはどんな感じなんですか?
きださおり:大きく2つのパターンに分けられて。ひとつは自分がなにかにめちゃくちゃなりきるっていうパターン。その「なりきる」っていうのがたとえば「あなたはスパイです」とかそういったのだったらなりきりやすいんですけども。私の場合は青春体験を作ることが多くて。「あなたは高校2年生の男の子です。幼馴染の願いを叶えてください。亡くなった幼馴染から届いたダンボールから、彼女の本当の願いを導き出してください」みたいなこととかを、普通に映画とか物語、小説を作るみたいな感じでストーリーを作って。で、「そのストーリーの主人公があなたです」みたいな形で当て書きしていくみたいなものと、あとは本当にアフロマンスさんだったらアフロマンスさんとして参加するという。誰にもなりきらないで自分として参加するっていうこの2パターンをストーリーとして考えて作っていくっていうことが多いですね。
アフロマンス:なるほど、なるほど。まあ喰種レストランで行くと喰種になりきるっていう話なのか、喰種レストランっていう空間に遊びに行くっていうのと2パターンがあるみたいな感じですね。ちなみにその世界観のあるイベントのつくり方でこういうことがポイントだなって思っていることとか、あります?
きださおり:たとえばその高校2年生になるっていう場合は正直、高校2年生以外は高校2年生じゃないじゃないですか。
アフロマンス:そうですよね。僕が制服を着てもちょっと辛いっすよね?
きださおり:いや、かわいいとは思いますけども(笑)。ただ、その時にやっぱり会場に足を踏み入れた瞬間からはもう自分が高校2年生だと信じて疑わない空間を作る。たとえば、机も本当に勉強机みたいなのが置いてあって、出てくるアイテムとかも本当に女子高生のカバンが出てきて。そこからシーブリーズの抜け殻みたいなのがちゃんと出てきたりとか。その高校生の時にあったこと、使うものもInstagramみたいなものを見ながらやっていったりとかというところで、現実には返さない。絶対にこの空間にいる時には「俺は高校2年生の男の子なんだ」っていう風に思えるようにして。
まあ、先ほどBGMを作るって言っていたんですけども、たとえば高校2年生の部活の話を作った時には、たとえば「マジックアワー」っていうタイトルのものをやって。マジックアワーでGOING UNDER GROUNDさんが『トワイライト』っていう曲を歌っていたと思んですけども。それをMINT mate boxっていう疾走感のある女性ボーカルの女の子にカバーしてもらって。もうBGMから、見えるものから、そして体験する物語から、その全てで現実に絶対戻さないというところの工夫をしています。
アフロマンス:さっき言っていた細部にこだわるというか、赤いポップを出さないみたいな。裏側の……もちろんイベントっていう風になるとどうしても本物の造作を作るというよりも、数日だとか1ヶ月だとか、期間限定のものを作るから、どうしても言い方は悪いですけども、ハリボテというかね。そういう部分ってあるじゃないですか。だけども、その部分を絶対に見せない?
きださおり:そうですね。うん。
アフロマンス:喰種レストランでも同じような話がありまして。やっぱり開催したての時にはゴミ箱が見えたりとか……。
きださおり:ああ、ゴミ箱ね! 見えがちですよね(笑)。
アフロマンス:とか、やっぱりオペレーションをしているスタッフたちからすると「効率化を考えると、ここにナプキンを置いておきたい」みたいな。「いや、それはやめて!」みたいな。「ここにマニュアルを置かないで!」みたいな。
きださおり:ああ、絶対にNGなやつですね。マニュアルは絶対にNG(笑)。
アフロマンス:とか、また喰種レストランの話ですけども。やっぱりいろんな仕事関係というか、クライアントも含んで来たりするんですけども。やっぱりマスクをしていない人が隅っこの方で立って代理店の人みたいな感じで見ていると、なんか嫌じゃないですか。
きださおり:そうですね。「高校にはそんなやつ、いないな」っていう人になっちゃいますよね。代理店の人はいない(笑)。
アフロマンス:そういうのも完全に排除するっていうことですよね。
きださおり:そうですね。なりきってもらうパターンの時には排除しますし、逆にご本人として参加してもらう時にはいかに自分ごとにさせるか。どんなことでも「あなたがいま、動かないとこの世界は進まないんだよ」っていうことを常々言って入っていってもらうっていう。まあ本当にその2つを心がけていますね。
アフロマンス:ちなみに実はこれ、事前の質問でもあったんですけども。結構その世界観を作り込んでいくと、「そこまではちょっといいよ」みたいな。なにかハードルを感じたりとか。わからないけど、「学生時代に戻る」ってなった時に「学生服を着ましょう」ってなったら「さすがにそれは無理です」とか。そういうののバランスとかを気にしているところ、あります?
きださおり:ありますね。いかにシームレスに入っていってもらうか?っていうのは非常に気にはしていて。たとえば、みんなで映画を撮ろうっていうストーリーのものだったら、最初にやっぱり映画を撮って。カチンコとかを鳴らすみたいな。で、学ランを着るのが嫌な人でも、カチンコは鳴らすんですよね。絶対に(笑)。それとか、「マイクに向かってアナウンスしてみよう」っていうと、アナウンスはしてくれるんですよ。で、そこから心をどんどんと解きほぐしていって、最終的にはガッとつかみに行くみたいな。
アフロマンス:なるほど。入りやすいところから徐々に設定に入っていって、気づいたらどっぷりとハマっているみたいな?
きださおり:そうですね。イントロが勝負だとは思っています。
アフロマンス:つかみっていうやつですね。ああ、それはめっちゃわかるなー。DJとかもそうなんですよね。結局。
きださおり:ああ、そうですよね。近いものがあると思います。
アフロマンス:もう最初の1、2曲でだいたい決まるっていうか。あれですよね。お客さんの気持ちからすると、「この人に身を任せてもいいんだな」みたいな。そういう風に思ったら「手を叩いて」って言っても叩いてくれるし。でも、「身を委ねるのは心配」みたいな気持ちになっちゃうと、いくらキャッチーな曲をかけても棒立ちからなかなか動いてくれないみたいな。それに近いかもしれないですね。
きださおり:そうですね。やっぱり主人公になってもらわないと物語が進まないので。そこまでの道はもう丁寧に丁寧に丁寧に……みたいな。
アフロマンス:結構それって「こういうことをやってください」みたいな。そういうのを指示出しというか。そういうので人を動かすんですか?
きださおり:指示出しは、最近はなるべくしないようにはしていて。もちろんゲームの場合は明確にしないと不条理になってしまう場合があるのですることもあるんですけども。たとえば最近、ちょっとゲームではないもので「のぞきみカフェ」っていう、お客さんのスマートフォンの中身とかを好きにのぞいて。たとえばそのお客さん役の役者さんなんですけども。「もう殺さないとヤバい」みたいな話をしていて。でも、そのスマホをのぞくと実は映画監督で。脚本で殺すか殺さないかを悩んでいるみたいなことがわかっていくっていうようなイベントをやったりしたんですが。その時とかはもう本当にお客さんに委ねて。「のぞきたかったらのぞいてもいいよ」っていう空間にして。でもやっぱり、1人がのぞきだすとみんなやりだすみたいな感じの自然発生的なものを狙ったりすることが最近は多いですね。
アフロマンス:うんうん。僕も最近、世界観型のイベントを喰種レストランとかでやり始めて。なんていうか、お客さんを能動的にさせるっていうか。こっちが「あれやって、これやって」っていう風に言わなくてもなにかしたくなっちゃうみたいな。置いてあったら座りたくなっちゃうし、いまみたいにスマホが置いてあったらのぞきたくなっちゃう。で、「やれ」って言われてやったことと、自分が自ら選んだ……まあ選んだ気になっているんですけどね。でも、ある程度見えない導線みたいなのが設計はされているんですけども。自分で選んでそれをやるみたいなことって結構大事だなと思っていて。
きださおり:そうですね。たしかに、それで言うと女の子をよく使います。やっぱりキャラクターを作るのが好きで。それは現実の人間でも二次元でもいいんですけども。女の子が目の前で「助けて!」って言って、そこに自分から立ち上がるとか。やっぱり自分から「この子を助けよう」って……。
アフロマンス:なるほどですね! もうね、漫画とかアニメとかのストーリーで行くと定番というか、必需品。困っている女の子みたいな。
きださおり:そう。でもピーチ姫とか助ける気にならないじゃないですか。「もっとお前もがんばれよ。ピーチの方も行けよ!」ってなるじゃないですか。
アフロマンス:たしかに。もうちょっと暴れてほしいですよね。
きださおり:そうそう(笑)。まあ、そういう意味では人が手を差し伸べたくなるような女の子のキャラクターとかは作りがちですね。
アフロマンス:作りがち(笑)。なるほど、なるほど。ありがとうございます。やっぱりすごい考えていますよね。作る時にね。じゃあ、次はアウトオブシアターの広屋くん。最近、すごいあれですよね。調子いいですよね。広屋くん。
広屋佑規:そんなことないですよ。先輩の圧が怖いです(笑)。
アフロマンス:最近、喰種レストランとはまた別にレストランをやっていましたよね? スターダストダイナーだっけ?
広屋佑規:ああ、そうですね。最近もウェイターが全員ミュージカル俳優のレストラン「Little Stardust Diner」というイベントも実施しましたね。
アフロマンス:あとはいまやっているのって何があるの?
広屋佑規:基本的には先ほど言った街中でのミュージカルショーを作るっていうのを軸にしながら、いま言ったウェイターがミュージカル俳優の企画や、あとは「世にも奇妙な怪談ツアー」という、これもまた街中×エンタメなんですけども。街中の観光ツアー×想像による恐怖×音声コンテンツを組み合わせた街歩きホラー体験ツアーみたいなことですね。これも作ったりしていました。
アフロマンス:なるほど。それはどうだったんですか?
広屋佑規:先ほどのお二人のお話を聞いていて、僕の考えている世界観づくりとか没入感みたいなものとは少し違うなと思っていて。2人は非日常な空間を圧倒的に演出して、そこにお客さんを没入させるっていうことだと思うんですけども。僕が面白いと思っているのは逆で、日常と非日常を曖昧にさせることが面白いなっていう風に思っているんですね。
アフロマンス:そうだよね。だってアウトオブシアターってその形というか形式からして作り込みってそんなにないもんね?
広屋佑規:そうなんです。街中を舞台にするということは、その街中というもの自体が圧倒的に作り込まれているので。だから、その作り込まれている街中を舞台に演者さんを加えて体験を作っていきます。要は世界観がすでにあるところに対して実施するのだけども、面白さとしては作り込みすぎずに、みなさんの生活の延長線上に「もしかしたらこういう世界が本当にあるかもしれない」っていうギリギリのところを攻めることによって、ちょっと違ったタイプの没入みたいなものを作っているんじゃないかな?っていう風にいまお話を聞いていて思いました。
アフロマンス:ちょっとずらしみたいな感じ? 日常の中に違和感を生むみたいな。
広屋佑規:そうなんですよ。「STREET THE MUSICAL」もたとえば商店街で実施するときは、実際にある店舗の2階の窓から演者が出てきて歌い上げるとか、屋上から紙吹雪を落として雪を演出するとか。本当に日常の延長線上に街と協力をしながら制作しています。
それこそ、演出させていただいている喰種レストランも、集合場所が非公開じゃないですか。実際に買った方のみに場所をシークレットでご案内して。
その集合場所に本番当日に行くと、喰種たちが迎えに来て実際の会場まで連れて行く。それは原作にある秘密の喰種レストランの場所をイメージして、「本当にこの人間界に喰種レストランがあるかのような体験をしてもらうにはどうしたらいいのか?」っていうことを考えて演出しました。そういう、非日常というところまでは作り込まずに、実際の生活の延長線上にあるかもしれないっていうのが面白さとしては結構あるな、みたいなことは思ったりしますね。
アフロマンス:そうだよね。『世にも奇妙な物語』みたいな感覚だよね。
広屋佑規:そうなんですよ。恐怖っていろいろと種類があって。基本的には「わあ!」っていう驚かす恐怖なんですよ。いま、割と世の中にある恐怖っていうのは。
アフロマンス:お化け屋敷とかね。
広屋佑規:でも、「わかると怖くなる」とか「理解できるとゾッとする」っていう恐怖ってあるなと思っていて。それって、いわゆる『世にも奇妙な物語』的な恐怖だと思うんですけども。あれを実際に体験できたら違った感じで面白いんじゃないかと思って。なので、その怪談ツアーも最初は怪談を聞いているんですよ。渋谷の様々な場所で怪談を聞くんですけど、だんだんと「これ、怪談で話されていることが自分の身に起き始めてしまっているのでは?」みたいなことを徐々に感じてもらいながらフィナーレまで向かっていくんですけども。
これも、最初は1エンタメを体験しているだけだと思っていたら、自分の身に本当にそれが降りかかってくる、みたいなことがいままでとは違っていて。体験の仕方が違うというか。本当に非日常空間に行って「わあ、今日は楽しかった!」ではなくて少し余韻が残るんですよね。
アフロマンス:それ、block.fmでやっても面白いかもしれないよね。ラジオ放送でさ、ラジオを聞いていると、だいたい家にはベッドがあるわけだし、テレビがあるわけじゃない? だからラジオを聞いている人が「あれ? これ、俺の家のこと?」みたいな……(笑)。
広屋佑規:そうなんですよ。その「あれ? これ、もしかして俺?」とかっていうあの瞬間が体験として面白いなって思っていて。そういうのは意外と意識して没入体験として作っているんじゃないかなと。
アフロマンス:ちなみに、前者の2人の感覚は僕もすごくわかって。僕もどっちかというと空間とかコンテンツとかを……なんて言うのかな? まあ物として作るって言うわけでもないんだけど。そんな中で、まあ広屋くんの場合は本当にこのいまいる「マグセブンのこのフードコート」とか。「ハチ公前」とか。そういう場所で非日常的な世界観を作るわけじゃない? それって結構難しいと思うんだよね。それってどうやって作っているの?
広屋佑規:僕も昔は……学生の頃からずっとこういう街中づくりをしていたのですが、その当時は若い勢いで「ゲリラでやっちゃおう!」という雰囲気でした。まあただ、いろいろと痛い目にあったので、いまは改善というか反省をしまして。ちゃんと街のみなさんと……。
アフロマンス:ちなみに、ぜひ失敗談も聞きたいんですけども。どういう感じだったんですか?
広屋佑規:本当にこれは結構昔の話なんですけども。僕が当時、渋谷のハロウィンでゾンビ企画みたいなものをやろうとしたんですよ。一般の方をゾンビメイクした人たちが襲おうとするのだけど、襲う直前に一般の方の目の前にゾンビを倒せそうなおもちゃのハンマーとかが置かれて。それを持ってゾンビたちを倒すと、そのゾンビたちが「わーっ!」って簡単に倒れて。あたかも映画のワンシーン、気持ちのいいゾンビを倒す体験ができますよっていうどっきり企画だったんですが、これがもう見事に大炎上して...。めちゃくちゃ炎上したんですよ。
アフロマンス:なるほど。トラックを倒したりとか?
広屋佑規:いや、あれはもう全然笑えなくて...。
アフロマンス:あれをやったわけじゃないんですね?
広屋佑規:あれは僕じゃないです。(笑)炎上した理由は、「迷惑だ」とか「なに考えているんだ」とか……ただ、「えっ、それ許可取ってるの?」という意見が一番多かったんですよ。たしかに許可は取ってなかったんですよね...。でもその当時、この企画は海外では結構有名な企画だったんですよ。
アフロマンス:ああ、そのゾンビが街中で襲ってくるみたいな?
広屋佑規:そうなんです、それを真似してやりたいなと。海外ではゲリラでやっても称賛をするような風土があるんですよね。ただ、それは日本ではできないということを僕は痛感して。なのでいま、街中×エンタメを展開しているところの思いとしては、日本でもそういう街中でのエンターテイメントを寛容に受け入れてほしい。それを実現するために街のみなさんに許可を取って、「本当にこの企画を実現したいんです」という想いを「街を盛り上げる施策として一緒にやっていきましょう」という形で一つ一つ丁寧にお話をしていきながら、理解のある場所の方々と一緒に作っているという感じですかね。
アフロマンス:なるほど。結果、いい話に終わったということね。失敗談はね。
広屋佑規:がんばって持っていきました... !
アフロマンス:で、ポイントというか、物がない中で世界観を作っていくポイントってありますか? 逆に結構僕はね、これはヒントになるような気がしていて。どうしてもコロナフェスみたいなものを作ろうとするとものすごく大変なわけですよ。あらゆる……もう本当にゴミ箱から全部作らないといけないから。あの世界観も僕はすげえなって思うけども、これを聞いている人が真似をできるか?っていうと、もちろん小さい範囲なら全然できる。参考になると思うんだけども、逆に言うと物がない中で世界観を作るってどうやってやっているの?
広屋佑規:でも僕たちは物がないかわりに役者はいるんですよね。その役者がいて、要はその世界の住人たちがいて。その住人たちがその世界を成立させてくれているから既存の場所でも成立できているというところはあるなと思っていて。
アフロマンス:そうか。要はさっきの「ゾンビの人」っていうことだよね。それが全てじゃないけども。
広屋佑規:その彼らが世界を彩ってくれているから、物は既存の物でもその世界に入れるっていうことはあると思います。ただ、誰でも既存の物を使った世界観づくりはできると思っていて。それこそ、僕が街中でやっていたどっきりで「タイムストップ」というのがあるんですよ。これは本当に昔の企画なんですが、まずみなさんを集合させて。公園で一斉に3分間止まる練習をするんですよ。練習が終わったらすぐに、たとえばこの下のハチ公前とかで時間を決めて「せーの!」で3分間、止まるんですよ。そうすると、あたかもその場にいた人は「ここでタイムストップが本当に起こっているのではないか?」と感じて少しざわつくという企画があります。これぐらいだとみなさんがワンアクションをするだけでその世界観を作れるから、アイデアによっては簡単にやりようもあるだろうなと、いま話していて思いましたけどね。
アフロマンス:それって場所を見てアイデアを考えるのか、アイデアを考えてから場所を探すのか、どっち?
広屋佑規:どっちもありますね。タイムストップとかはどこでもできるので。これはアイデアで「人が止まる様子」を見ている人に届けられたら面白いよねっていうことで作っています。逆に「STREET THE MUSICAL」はむしろその街並みを最初に見て、「この建物にはこのミュージカルソングが合いそうだよね」という逆算でショーを紡いでいったりするんですよね。だから本当に企画によりけりで「場所から」と「企画から」という2つがあると思いますね。
アフロマンス:なるほど。ちなみにいま、まあまあいい時間になってきたんですけども。(Twitterに)感想はあるけど、そんなに質問はないっていう感じの状態になっていますね。「コイケ」さん。「スーパーオーガナイザートーク、今日だったのか。ううーっ!」って言ってますね。
きださおり:感想っすね(笑)。
アフロマンス:来たかったんでしょうね。とか、「コロナを飲みながら見ています」とか、そういう人もいますね。
福田真美:ありがとうございます。
アフロマンス:で、結構残り時間が短くなってきたんですけども。あ、そうか。すでに質問が来ているんですね。ええと……「アイデアの発想から実現までの間にどんな壁が立ちはだかりますか?」って。まあ、さっき聞いたので。きださんとか、なにかあります? ある意味、苦労話になのかもしれないですけども。難しいこととか、壁に当たることとか。
きださおり:あります、あります。かなり頻繁に壁には当たりますけども。広屋くんの話を聞いていて思い出したことがあって。あれは4年ぐらい前だったかな? 忘れちゃったんですけども、街中に食パンをくわえた女の子を放ちまくった企画をやったことがあって。
アフロマンス:ええっ、めっちゃ面白い!
きださおり:「食パン女子を探せ」っていう。で、私が好きなアイドルの子たちに食パンをくわえてもらって、セーラー服を着てもらって、渋谷に放ったんですよね。
広屋佑規:それ、やりたかったなー!(笑)。
きださおり:ただ、その時にガチのアイドルを使ったんですよ。やっぱりかわいくないと正直、ぶつかっても嬉しくないじゃないですか。……警備っすね(笑)。もうその子になにかあったら、企画倒れになってしまうので。そのアイドルの5倍ぐらいの人を集めて。その子がもう気持ちよくお客さんにぶつかれるように……。
アフロマンス:それって、食パンをくわえている女の子がいて、その周りを5人ぐらいのSPみたいなのが囲っているっていうことですか?
きださおり:でもバレちゃ台無しじゃないですか。なので「遅刻、遅刻!」って言っていてバッとぶつかるんですけども、そのお客さんがもしファンの方とかでガッとされそうになったらバッ!って出るみたいな。
アフロマンス:なるほど。影に隠れているというか。
広屋佑規:警備、めっちゃ大変っすね(笑)。警備の人のスキルが。
きださおり:警備、大変ですし。あとはやっぱり街中でやるものはそれで言うとすごい許可は取っていたなって思いましたね。
アフロマンス:あ、取ってました? 「食パン女子を放つ許可」ってすごい……わかんないんですけども。どうやって取るんですか?
きださおり:いや、それはもうコツで。
アフロマンス:コツがある? コツを聞きたいですね。
きださおり:コツで、やっぱり警察の人と懇意にするっていう……(笑)。
アフロマンス:ああー、仲良くなっちゃうという。
きださおり:いま、歌舞伎町でお店をやっているんですよ。で、街歩きのコンテンツを作るっていう時とかに、歌舞伎町で怖いじゃないですか。どうしよう?って思った時にその歌舞伎町のいろんな、キャバクラとかホストクラブとかを経営している方たちが集まる経営者の会合にお邪魔して。で、「こういうことをやりたいんですけど。悪いことはしないんで、協力してください」って言って。そうすると、キャバクラの方とかホストクラブの方とかも「面白いじゃん。協力するよ」って言ってくれて。で、まあ警察の人もいい警察の人を紹介してくださったりもするんですよね。そういう寛容な方を。なのでやっぱり「外でやるイベントの方がハードルは高い」っていうことは聞いていて「そうだな」って。やっぱり歌舞伎町でもミステリーサーカスの中でやるよりも外でやる方が実現ハードルが高いという場合はありますね。
アフロマンス:ありますね。僕もいま、話を聞いていて思い出したんですけども。渋谷ズンチャカ!っていう渋谷の中でいろんなところで楽器を演奏したりとか、DJをやったりっていう、ヤマハさんとかが主導でやっているイベントがあって。それでそれこそ「センター街でなにかできないか?」って言われて。なぜか僕はその時に「パジャマでパジャマパレードをやりたい」って言って。「みんなパジャマで歩く。DJもいるみたいなのをやりたいです」って言ったんですけど、まあ大変な……OKは出たんですけども。要はパレードのルールみたいなものがあって。隊列を組まなきゃいけなくて。要は、たまたま道を歩いている人とそのパレードに参加している人が見て明確にわからないといけないみたいな。で、その隊列からはみ出たらアウトみたいな。だからパジャマの人たちがなぜかすげえ隊列を組んで歩いているみたいな(笑)。
きださおり:仮面とかも結構規制があって。「これぐらいの人数の人が仮面をかぶってやっていたら、それはパレードになってしまうのでダメ」とか。いろいろとありますね。
アフロマンス:ちなみに福田さんの方も壁というか、失敗談じゃないけども、ありますか? 「難しかった」みたいな。
福田真美:やっぱり私たちはブランドと会社を背負っているので。会社が世界のナンバーワンビール会社っていうことなんで。あんまりハチャメチャをすると本当にいなくなるっていうところがあって。
アフロマンス:ああ、もう広屋くんみたいなことをやるとクビが飛ぶという。
福田真美:というような責任はいつもチラついているので。逆にでも、いまお話を聞いて、いろんなことに挑戦をしていくことこそが今後のコロナの課題だなっていうのは思ったので。
アフロマンス:めちゃめちゃポジティブに言ってくださってありがとうございます! でも、たしかに結構みんなが「できない」って思っていることってすごく多くて。僕はSlide the Cityっていう街中の道路を封鎖してウォータースライダーで滑るっていうイベントをやったんですけども。やっぱり道路を封鎖するとか、できるの?っていう話じゃないですか。で、いろんな場所を探して、たまたまお台場の夢の大橋っていう橋があって。そこの前を通った時に……日本でいちばん大きい車の通っていない歩道の橋なんですけども。幅が20メートルぐらいあって。「こんなところでスライダーができたら最高だな」って思ってフッと見たら、問い合わせ事務局みたいな看板が足元にあって。で、その場で電話をして。そしたら、電話に出たその東京都の担当の方がSlide the Cityのことを知ってくれていて。「やりましょう!」みたいな。
きださおり:最高じゃないですか!
アフロマンス:もちろんそこからはいろいろとあるんですけども。でも、さっきの警察の話と同じだと思うんですけど。やっぱり一丸となってというか。規制をする側も別に規制をしたくて規制をしているというよりは、リスクが怖いみたいな。どこの誰がなにをやった時に炎上や事故が起こったら怖いっていう話なので。そこでちゃんと信頼関係を作ってやったら意外と……「意外と」って言い方は悪いですけども。まあいろいろとできるんだなっていう風には思うので。僕ももっと勇気を持ってほしいと思うのは、よく「海外だからできるんだよね」って言うじゃないですか。海外とかのイベントを見ていると。でも、そんなことはないと思うんですよね。
きださおり:いや、そうですよね。「盆踊りを見ろ!」っていう話ですよね。盆踊り、めちゃくちゃIMMERSIVEじゃないですか?
アフロマンス:たしかに。すごいよね。あれね。ある意味、全部足したような感じですもんね。街中で世界観があって……みたいな。
広屋佑規:そうなんですよね。本来、お祭りは日本にこれだけたくさんあるから、みんな街中で何かを楽しむというのは好きなはずなんです。そのお祭りをアップデートしていきながら企画を作っていくというのは、IMMERSIVE体験作りとしても良いことなのではないかと強く思います。
▶「スーパーオーガナイザートーク by アフロマンス」
放送日:毎月第2木曜日 20:00 - 21:00 O.A.
番組URL : https://block.fm/radios/612
HP:http://afroand.co/superorganizertalk/
「スーパーオーガナイザートーク」は、これからイベントをつくりたい人や、イベントをより面白くしたい人に向けて、「泡パ®︎」や「マグロハウス」、「喰種レストラン」など話題のイベントを手がけるパーティークリエイター「アフロマンス」が、注目のイベントの仕掛け人(スーパーオーガナイザー)たちにガシガシ突っ込んでいく、イベントづくりのバイブル的番組です。回ごとにテーマを設け、イベントの発想法や、企画のプロセス、失敗談などを深堀りしていきます。
また、Twitter「#スーパーオーガナイザートーク」やsli.do(イベントコード:#SOT3)で質問を受け付けたり、渋谷駅直結の「MAGNET by SHIBUYA109」7Fで公開放送し、放送終了後にゲストを交えた交流会も開催されるなど、リスナーや来場者も参加できる内容になっています。
written by みやーんZZ