今や音楽作品を発表する上で定番の形となった“デジタル配信”でのリリース。自分の作品をSpotifyやApple Musicなど音楽配信プラットフォームで配信するには、音楽ディストリビューションサービスを使用する必要がある。
ただ、一言で音楽ディストリビューションサービスと言っても国内外に数多くの企業が存在し、どのサービスを選択すべきかが悩ましいところだろう。
今回注目したいのは、2020年に日本でのサービスを開始した「Spinnup」だ。世界最大の音楽企業ユニバーサルミュージック・グループが運営する音楽ディストリビューションサービスである。
この記事では数あるディストリビューションサービスの中からSpinnupならではの強みを紹介しつつ、その特徴や魅力について紹介したい。
さらに、日々インディペンデントアーティストの活動を支えるSpinnupのスタッフに聞いた“音楽配信で成功するTIPS”もあわせて紹介していこう。
Spinnupの特徴としてまず注目したいのは、対応するストリーミングサービスの多さだ。
たとえばクラブサウンドに特化したストリーミングサービス「Beatport」は、世界中のDJが集まる重要な配信先のひとつ。しかしながらBeatportに対応できる音楽ディストリビューションは少なく、この1点だけでもSpinnupを選択するメリットは大きい。クラブサウンドを得意とするクリエイターや、DJシーンへもアピールできるスタイルのサウンドであれば、Spinnupを通じてBeatportに配信できることは大きな利点になるだろう。
また、世界でも大きなマーケットに成長している中国や韓国のマーケットでは現地のストリーミングサービスが主流となっているため、SpotifyやAppleだけではリーチできないリスナーも多い。Spinnupは中国の「QQ Music」、韓国の「genie」、そして日本でも特に若年層にシェアの高い「LINE MUSIC」や「AWA」など日本発の配信サービスにも対応している。
この他にも様々なストリーミングサービスに対応しており、2021年6月現在、63種類の音楽ストリーミングサイトに配信が可能だ。ユニバーサルミュージックは世界各地で音楽事業を展開しているため、対応できるストリーミングサービス数は突出して多い。
世界各国、数多くの人気ストリーミングサービスへ一度にリーチできるSpinnupは、様々なマーケットに楽曲を届けることができるという点で、日本のみならず世界にリーチするためにも有利なサービスといえるだろう。とくにダンスミュージック系のサウンドであればBeatportへの配信は必須なので、配信するならSpinnup一択で考えてもいいかもしれない。
Spinnupでの配信曲はすべてスタッフが聴いており、ポテンシャルの高いアーティストはユニバーサル傘下のレーベルでメジャー契約できる可能性があることも注目したいポイントのひとつ。このような取り組みはレーベルが運営しているディストリビューションサービスだからこそできることで、他社では見られない大きな特徴だ。
すでに世界中で100組以上のアーティストがSpinnupでの配信後にユニバーサル傘下のレーベルと契約をした実績があり、サービスを開始したばかりの日本でも「あれくん」と「Jhonatan」がメジャー契約を成し遂げている。
上に紹介した2点だけでなく、Spinnupにはアーティスト活動においてかゆいところに手が届く様々な仕組みがある。
まず挙げたいのは日本国内でのサポート体制。日本国内でのサポートというのは当たり前のことのように思えるかもしれないが、音楽ディストリビューションサービスは海外企業が多く、日本に支社のない企業の場合ほとんどは英語のみのサポートとなる。また、アジア圏にサポートセンターがない場合は時差もあり、質問をしても返事は翌日まで来ないといった可能性もあるので、英語ができる場合も注意が必要だ。
Spinnupのサポートオフィスは東京にあり、時差なく日本語で対応。アーティスト目線での細かいサポート力が強みとなっている。例えば楽曲タイトルの誤字脱字など、配信後の楽曲情報の修正についてサービスによっては非対応のケースもあるが、こういった細かい依頼にも柔軟に対応しているそうだ。
さらに公式のSNSやプレイリストを使って、アーティストの楽曲をより多くの人に届けるサポートも。SNSでの楽曲の拡散やプレイリストへの掲載は作品をより多くのリスナーに届けるために最も有効な手段だが、活動初期のアーティストには難しい部分でもある。
Spinnupではそういったアーティスト活動をバックアップすべく、スタッフが毎日すべての登録曲を聴いて確認し、自社で運営するSNSやプレイリストで楽曲を紹介。Spinnupのプレイリストで紹介した楽曲は、そこから海外の有名なプレイリストに掲載されることもあるそうで、この場合は再生数やアーティスト認知も大きく伸びる。特にこれから知名度を伸ばしていきたいアーティストにとっては、強力なサポートになるだろう。
また、Spinnupを利用することで使用できるダッシュボードでは配信後の再生状況が確認できるだけではなく、SNSを連携しフォロワー数の増減をチェックすることも可能。リリース後は各種配信サイトをまとめたランディングページも簡単に作ることができるのでSNS拡散にも便利である。また、リリースやライブ情報、バイオグラフィをまとめたアーティストページを簡単に作成・公開できるので、マーケティングやプロモーション活動をSpinnupのアカウントから一括で管理することが可能だ。
参考にこちらがSpinnupで作成されたアーティストサイトである。
▶https://site.spinnup.com/torimis
マーケティングやPRも自ら行うことの多いインディペンデントアーティストは、こういったサービスをうまく利用することによって、その分クリエイティブに多くの時間を使えるようになることは大きなメリットだろう。
ここで、Spinnupの利用料金やキャッシュバック率も確認しておこう。
Spinnupの2021年6月現在の価格設定だが、
シングル(1〜2曲)¥990
EP(3〜6曲) ¥2,390
アルバム(7〜25曲) ¥4,490
※すべて税込、年単位
売上については100%キャッシュバックとなっている。
ちなみに比較として国内でサービスを行う2社のシングル価格が
TuneCore Japan ¥1,410 / 100%キャッシュバック
BIG UP ¥1,380 / ストリーミング100%, ダウンロード60%キャッシュバック
となっており、金額面でもSpinnupは利用しやすい価格設定といえそうだ。
音楽活動をはじめてある程度のリスナーを獲得できているのであれば、これを機に配信を始めてみるのもいいのではないだろうか。
本記事の執筆にあたりSpinnupの担当者から、配信で成功しているアーティストや配信からメジャーデビューしているアーティストの傾向について話を聞くことができた。
配信でも伸びやすい傾向があるのは、コンスタントなリリースを継続できるアーティストだという。最低でも2〜3ヶ月に一度の新曲リリースはあった方がいいということだ。
また、メジャーデビューにおいては曲のクオリティや音楽性がレーベルとマッチすることは大前提として、レーベルによってはSNSでの積極的な活動が見られるかという点も着目されることがあるそう。
スタッフの方からは真摯に「アーティストをサポートしたい」という、良き音楽業界人根性のような姿勢が強く感じられ、そのような部分は今後も新たなサービスや付加機能の差として現れてくるのではないだろうかと感じた。
今回執筆にあたって改めて音楽ディストリビューション各社を比較し、口コミやSNSでの反応を読んでみたが、Spinnupは費用・機能・アーティストサポートともによく考えられており、「さすがは世界の音楽トレンドを牽引するユニバーサルミュージックのディストリビューションサービス!」と思わされる完成されたサービス内容となっていた。
企業規模としてもJustin Bieber、Eminem、The Weeknd、Billie Eilish、BTSなど、挙げだすときりがないほど世界の大スター達を多数抱えている音楽業界の超大企業ということで、今後の展開が楽しみな音楽ディストリビューションサービスでもある。
これから楽曲の配信を始める方から、すでに別のディストリビューターを利用中の方まで、多くのアーティストに自信を持っておすすめできるサービス内容なので、ぜひ選択肢の一つに加え比較検討されてみてはいかがだろうか。
Spinnup 公式サイト:https://spinnup.jp/
written by Yui Tamura