『ゲームオブスローンズ』のブラン役。☆Takuと丸屋氏がロングインタビュー

今後『ゲーム・オブ・スローンズ』の物語でよりいっそう重要な鍵を握る彼から、色々とお話が聞けた
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2017.08.20 08:55

『ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌』 アイザック・ヘンプステッド・ライト(ブラン・スターク役)インタビュー

去年、エミー賞を2年連続で最優秀賞をとった『ゲーム・オブ・スローンズ』。出演者曰く「放送をしていないのは北朝鮮くらいだよ」というくらい世界的現象となっているファンタジー作品。ドラゴンや魔法などが苦手な僕でさえこの作品の虜になってしまっています。シーズン7が放送スタートしたということで、スターチャンネルさんが主要キャラクターでもあるブラン・スターク役のアイザック・ヘンプステッド・ライトを日本へ連れてきてくれました。というわけで、ここで黙っちゃいられないのが、僕ともう一人のGOT盟友の丸屋九兵衛氏。二人でいろいろと突っ込んだ質問をしてみました。

▷アイザックさんの俳優のキャリアってどうやってスタートしたか教えてください。

アイザック・ヘンプステッド・ライト(Isaac Hempstead Wright、以下IHW)
「ほとんど意識せず、気がついたら役者業をやっていたんだよね。地元で、週末に活動する演劇グループに入ってたんだ。でも単なる趣味で、燃えるような情熱は持っていなかったんだよ。でもだんだんと、演じることの楽しさと、演技が得意だということがわかってきた。当時の『ゲーム・オブ・スローンズ』はパイロット版のためのキャスティングをしていて、でも誰もどういう内容か知らなくてさ。イギリスの小さな村に住んでいる僕の周りでは、それが何なのか誰も知らなかった。誰も原作を読んでなかったし。HBOにしても、かなり大きなケーブルテレビ局だけど、当時のイギリスではあまり人気がなかった。何もかもが今ほどビッグではなかったんだ。とにかく、演技の先生に言われて、オーディションには行った。誰でも参加できるオープンキャスティングだったからね。どちらかというと、キャスティングディレクターに会ったり、ロンドンまで行ったり、そうした経験を積んでみたかったから。ところが何度も何度も呼び出されてオーディションを受けることになった。僕はまだ9歳、10歳の子供だったから「ああ、これってすごいことだ!」とか「集中しなきゃ」と興奮することもなかった。「なかなかクールだけど、今はサッカーをしに行かなきゃね!」というような感じだったよ。でも、それがきっかけでブラン・スターク役になって、いま僕はここにいる感じだね」

▷サッカーといえば、演劇を始めたのはサッカーをやりたくなかったからでは?

IHW「100%そう! 毎週土曜日の朝にサッカーのクラブに行ってたけど、コートは濡れてるし、とても寒いし、雨も降ってるし、これは僕には向いていないなと思った。それで演劇のグループに入った。でも、あとから『ゲーム・オブ・スローンズ』にキャストされたら、その現場も濡れているし、寒いし、雨が降っていた(笑)」

▷むしろ、そっちの方が寒かったり?

IHW「うん。サッカーやってた方が良かったかも(笑)」

撮影現場にいる時のマックス・フォン・シドーは常に静かなオーラを漂わせていて、本物の「三つ目の鴉」みたいだった

▷キャスト最年少組として10歳の時に始めたんですよね。こうして成長して、何か変わってきたところはありますか? 特に俳優として。

「一つは、実際に俳優として結構なキャリアを築いていることだね。少なくとも最初の3年間、11、12、13歳の頃は、流れに身を任せるしかなかった。こんな経験、初めてだからね。「あ〜、これは楽しい」という感じだった。ブランは子供キャラクターで、まさに僕も実生活で子供だったから、ブランを演じる上でキャラクターを作りこむ必要はなかった。素のままでできたんだ。それが、大人になってシーズン6で復帰して、キャラクターで遊ぶこと、そして新しい人格を作り上げることが可能だと気づいたんだ。シーズン7でもそれは同じだと思う。今やブランは「三つ目の鴉」だから、もうまったく新しいキャラクターだよね。今の僕は自分が俳優だという強い自覚があるし、やり甲斐も感じているんだ。それをこんな凄い番組でやり遂げることが楽しい。何よりキャラクターが素晴らしいしね」



▷ブランは他の登場人物との接点が少ないキャラクターですが、元祖「三つ目の鴉」ことマックス・フォン・シドーと共演しましたよね。演技について指導はしてもらえました? IHW「彼はかなりの歳だから、そんな彼をつかまえて「どうか演技の極意を教えてください」とは言えなかったよ。でも、現場にいるときの彼は常に静かなオーラを漂わせていて、本物の「三つ目の鴉」みたいだった。「こうしなさい、ああしなさい」とは教わらなかったけど、「三つ目の鴉」を演じる彼を見て、たくさん学んだと思う。彼の身のこなし、彼の静けさは僕の演技にも影響しているよ。でも全体として、彼は本当に礼儀正しい紳士だ。現場でいろいろ要求できる立場なのに、そうしない。貴重な存在だと思う」

▷他のキャラクターとの繋がりについて戻ると……トメンと一緒にジェットコースターに乗っててましたよね? どうやって知り合ったんですか? IHW「それは結構面白い話だよ。僕は出演もしていないシーズン5のプレミアに参加して、そこで彼に出会った。そこではちょっとした挨拶しかできなかったけど、2週間後にアワードショーであって、それがすごく楽しくって。そこから数週後に一緒にテーマパークに行った。その夏にとても親しくなって、今ではほぼ毎日、FaceTimeで話してるよ」

▷その時、キング・トメンの運命は……?

IHW


「本当に残念だったよ。ちょうど友達になれた頃に、あのシーズン6の撮影が始まってしまうなんて。彼から「ね、今年たぶん僕(の役)は死ぬよ」と言われたことを覚えてる」

▷さっき話に出た通り、君はシーズン5には出てませんよね。その間は何してたの?

IHW「その年、ちょうど試験が多かったから。あと、長い夏休みをもらえて、ちょっとした自由もあったから良かった。『ゲーム・オブ・スローンズ』づくめではない夏をエンジョイしたよ」



▷そして、シーズン6で1年のブランクの後、現場に戻るのはどうでした?


IHW「あの1年の間に、『ゲーム・オブ・スローンズ』のスケールの大きさを感じられた。自分が参加しているときは、プレミアからプレミア、ホテルからホテルに移動する毎日で、その存在の巨大さがわからなくなる。でも、離れてみて、その人気を思い知ったんだ。だから復帰する時は心配になったよ。「この1年、ろくに演技をしなかったけど、こんなビッグな番組に戻れるんだろうか?」と。撮影初日は「もうやり方を忘れてる」という感じだったけど、徐々にノリを取り戻した。とにかく、復帰できて良かったよ。ちょっと成長して現場に戻れたことも」


Kristian Nairn(ホーダー)のDJプレイは見たことがないんだよ! 僕は最近やっと18歳になったばかりで、これまでクラブに行けなかったからね。もみくちゃにされるだろうけど、彼のDJを見たくてたまらない ——Isaac Hempstead Wright


▷子供の時はあまり心配することはないけど、大人になるといろいろ見えてきますよね。


IHW「そう! 急に「そうか、演技しなくちゃ!」と思ったんだ。今まで自然にやっていて、あまり考えてなかったのに」


▷しかも、ブランは強烈な存在に変貌したしね。誰も予想してなかったと思う。


IHW「単なる少年だったのにね。こんなに巨大な魔術的な力を持つことになるとは思っていなかった」


▷ミーラ&ホーダーと旅するシーンが多かったですよね。特にホーダー。彼を演じたクリスティアン(Kristian Nairn)との交流を教えてもらえますか?


IHW「初めてクリスティアンにあったのはベルファストでだった。彼はスマートフォンを持っていて、そこにハリー・ポッターのアプリが見えて。「おお、やってみていい!?」と聞いたら、彼は「いいけど、絶対に落とさないでね」と言った。でも僕はスマホを借りるや否や、すぐに落として、壊してしまったんだ。でも、それがきっかけで仲良くなった。クリスティアンは兄のような、父のような人だね。僕は文字通り彼にくくりつけられていたから、いい友達になるか、ライバルになるかだったけど、仲良くなれて本当に良かった。アドバイスをくれる相手でもあるし、いつも側にいてくれる人。この『ゲーム・オブ・スローンズ』というクレイジーな旅をずっと共に歩いてきた。演技の経験が浅くて、これほど大きな現象に関わった経験がないことも共通してたし。今は僕の友達というだけではなく、僕の家族とも仲良くて、僕の誕生会にも来てくれたし。そうだね、クリスティアンのことは本当に大好き」


▷彼のDJプレイは見たことは?


IHW「いや、それがないんだよ! 最近やっと18歳になったばかりで、これまでクラブに行けなかったからね。もみくちゃにされるだろうけど、彼のDJを見たくてたまらないんだ」


▷やっとクラブにいける歳になりましたね! 音楽といえば、好きなジャンルは?


IHW「どんな音楽も好きだよ。そもそも僕はピアニスト志望で、クラシックを練習してたんだ。だから、クラシック音楽を中心に、ジャズもたくさん聴いてた。最近はギターを習い始めて、バンドものをよく聴いている。ザ・リバティーンズ、ローリング・ストーンズ、ビートルズやザ・アンダーグラウンドズ(ひょっとしたらベルベット・アンダーグランドのことかも)が好き。あとは何でも好きだけど。カントリー以外なら何でも(笑)」




▷ドラマの撮影といえば待ち時間が長いですよね? 待っている間はみんな何をしているんですか?

IHW「いまはiPhoneやiPadがあるから、ほとんどの人はそれをやっているかな。撮影が終わった瞬間、すぐスマートフォンをいじる。それから、本を読む人やタバコを吸う人が多い。タバコを吸う人は外で、また撮影が始まるまでずっと吸っている。僕はフラフラと歩いて他のセットに行き、何をやっているかを見るのが好き。誰かが「アイザックはどこ!?」と言い出したら、自分のセットに戻る」


▷アイスランドでの撮影が多い?


IHW「アイスランドには行ったことがないんだ」


▷じゃあ撮影はベルファストのスタジオ? 雪のシーンが多いですが。

IHW「雪のシーンもベルファストだった。紙で作った雪を大量に、すごい勢いで僕たちの顔に吹き付けてくるんだよね。ちょっと大げさだけど、あるシーンで僕たち俳優はみんなゼイゼイしてて、振り向いたらスタッフがガスマスクを着けててね。「僕たちを殺す気!?」と思ったよ」


▷ベルファストにいるということは、他のシーンを撮ってる俳優にも会えるんですか?


IHW「そう。ベルファストのスタジオは『ゲーム・オブ・スローンズ』の中心地。一回スペインで撮影したけど、そこでは本当に自分ひとりだけ、他の人には出くわさない。でもベルファストではいろんなシーンが同時進行で、ホテルを歩きまわるだけで誰かしらに会うし、その人と飲んだりもできる」



▷HBOのネタバレ対策は大変ですか? 例えば、ジョン・スノウが生き返ることが、俳優陣には知らされてなかったとか……。


IHW「ジョンに関しては、僕も脚本を読むまで知らなかった! でも教えてくれないことを願ってた。一番大きな秘密だし。もっとも、実際に死んだと思った人はいなかったと思うけど。でも、HBOはずっと「ジョンは死んだ」と言い続けてた。だから本当に気をつけなければならなかった。ジョンを演じるキット・ハリントンが撮影しているところでは、ドローンを飛ばして監視してて。本当に厳しかった!」


『ゲーム・オブ・スローンズ』は、他の物語のように「はい、こちらは善です。こっちは悪です」みたいな設定でオーディエンスをバカ扱いすることもない ——Isaac Hempstead Wright


▷脚本を全部読むタイプ? それとも、自分のパートだけ?


IHW「ブランがどの方向に行くか知るためにどっちもやってみたけど。このシーズン7に関しては、脚本をすべて読んだ。何が起こるか全部知りたくって。ただ困るのは、すべて読んでしまうと、完成版を見るときにエンジョイできなくなっちゃうこと。でも読んだのはかなり前だから結構忘れてると思う」


▷完成版はみんなより先に見られるんですか?


IHW「いや、ADRと呼ばれる断片をスタジオで見ることはあるけど、基本的にはTV放映のタイミングで見てる。第1話はキャスト全員がLAのプレミアで見て、そこからあとはみんなと同じようにTVで見ているよ」


▷日本でも熱狂的な『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンはたくさんいますが、他の国みたいに大きくはありません。僕らが愛してやまない作品だから、日本でももっと人気が出て欲しいんですね。どうしたらいいと思いますか?


IHW「その質問にはたくさんの答えがあると思う。僕が思うに、『ゲーム・オブ・スローンズ』は、現実の歴史にヒントを得ているのに、特定の国や特定の時代に設定してないところが良さだと思う。だから、本当にどの時代と考えてもいいよね。時代は現代だけど他の惑星の話、かもしれない。リアリティに溢れてるのに、ドラゴンみたいなクールな要素で話を発展させているのもいい。一番賢いところが、ファンタジー要素を押し付けないこと。「エルフです、ピクシーです、はい、ここにはドラゴンがいます」なんていう風にはならない。現実の世界と同じように、『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界の人々も魔術の存在を信じてないし、魔術が使われるとしても現実味を持って扱われる。それに、他の物語のように「はい、こちらは善です。こっちは悪です」みたいな設定でオーディエンスをバカ扱いすることもない。豊かで広大な世界で、次にどうなるか誰もわからないし、善人か悪人かもわからない。例えば、みんなが応援するアリア・スタークも、実は大量殺人犯。キャラクター全員が道徳的に曖昧だよね。どんなことでも起こりうる世界だからこそエキサイティングで、だからみんな大好きになっちゃうんだよね」


▷じゃあ、ブランAKA「三つ目の鴉」は善人? それとも悪人?


IHW「それなんだよね。彼はいろんな人に深刻なダメージを与えちゃって。「森の子ら」が絶滅したこともブランの責任だね。そして、ホーダーの障害もブランのせいだし。それでも彼は比較的「善人」に近いキャラクターの一人ではあるとは思う。正直言って、悪意に満ちたブランなんて見たことないよね。でも、そういえば誰かを殺したよね! ホーダーの体を操ってた時だけど」


▷彼はあどけないところもあるけど、いろんな問題を起こしちゃいますよね。


IHW「そうなんだよ……」


▷あなたの観点から見て、プロデューサーたちは何かメッセージを伝えようとしていると思いますか?


IHW「『ゲーム・オブ・スローンズ』の中にはたくさんのメッセージがあると思うんだよね。いろんなストーリーラインがさまざまなテーマを扱っていて、いろんなところからそれぞれ違うメッセージを読み取ることができる。『ゲーム・オブ・スローンズ』全体を見ると……例えば、権力の腐敗。ジョフリーは王位についてから、どんどん狂っていく。一方、ティリオンは身長が低いだけで、偏見にさらされ、疎外され、嘲笑される。でも『ゲーム・オブ・スローンズ』のいいところは、そんな彼をウィットに富んだ賢い男として描いていること。そこには「外見から判断するな」という教訓も含まれていると思う。同時に、政治的なメッセージもあり、戦争と平和に関する教訓もあって。『ゲーム・オブ・スローンズ』が最高なのは、視点が1つだけではないということ。いいこと、悪いこと、複雑なこと、シンプルなこと、いろいろな要素を敷き詰めた、大きな絵を描いているようなもの。さまざまなテーマで織られたタペストリーみたいになってる」


▷そして最後の質問ですが、今は大学生? Wikipediaでは『ゲーム・オブ・スローンズ』の後に大学行くと書いてありましたが…


IHW「誰が書いたかわからないけど、それは本当のことではない(笑)。まだまだ博士号を取れるほどじゃないからね」


▷シーズン5の後でも、別の映画に出演しましたよね。


IHW「いくつかね」


▷今までどおり、これからも俳優業を続ける予定ですか?


IHW「うん。これから自分のキャリアがどんな方向に向かっていくのか知りたいね」


▷ジョフリーに比べられることは?


IHW「あ〜そうだね。彼が大学に行ったから。ジョフリーを演じたジャック(Jack Gleeson)は本当に頭が良くって。比べられることはとても名誉だ!」


▷シーズン7はスターク家のリユニオンになりそうですが、そのあとのシーズン8でもブランは生き残ってますか?


IHW「そんなこと、誰も知らないよ! それを知ってる人なんて、この世界で3、4人くらいしかいないと思う」


▷予想では?


IHW「予想!? あ〜、フィナーレで多くの死があるかも。たくさんの人が殺されそう」


アイザックさんをインタビューをしていて感じたのは、彼はとても頭の回転が早いところ。質問したあと、1秒くらいで全ての答えを思いついて、良質なフリースタイルラップのように流れるような口調で熱く話してくれました。今後『ゲーム・オブ・スローンズ』の物語でよりいっそう重要な鍵を握る彼から、色々とお話が聞けたのおはファンとして極上の瞬間でした。ちなみに、彼のインタビューのビデオもあるので、そちらもチェックしてください。




<放送情報> 『ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌』

BS10 スターチャンネルにて毎週月曜10:00〜日米完全同時放送中

(9月2日23:30より日本語吹替版 独占放送スタート)

「スターチャンネル オンデマンド」でも日本最速配信中

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Written by Taku Takahashi

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