Hardwellの新曲のジャンルって?UK Garage、2stepについて

この曲スゴく良いんだけど、なんてジャンルなの?という方は必読
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2016.08.26 21:15

Written by TJO (Takeru John Otoguro)

あなたはもうHardwellの新曲を聴きましたか?今年の3月に米国マイアミで開催された「ULTRA MUSIC FESTIVAL」の2日目の大トリを飾った彼が、突如UKシンガーCraig Davidをゲストに迎え入れて放ったメロディアスなヴォーカル・チューン。それからその曲がいつリリースされるのかと首を長くしていた人達も多かったと思いますが、遂に先週末に彼のレーベルである「Revealed Records」から正式にリリースされました。それが「No Holding Back feat. Craig David」です。


「この曲スゴく良いんだけど、なんてジャンルなの?」、「この飛び跳ねるようなビートは何?」、「これはディープハウス?」と今までとは違った聴き慣れないビートに興味を持った人も多いのではないでしょうか。EDMほど派手ではないものの、ベースラインが太くて、ビートが普通の四つ打ちとはちょっと違うビートを刻んでいる。近年ではEDM以降のハウス・サウンドを総括してディープ・ハウスと呼ぶ事も多いですが(この言葉も過去と今ではニュアンスが変わって来ていますね。)、この曲のサウンドは「UK Garage、2 Step」と呼ばれていて、今のUKのダンスミュージック・シーンを語るのに欠かせない要素となっています。そこで今回この楽曲をキッカケに「UK Garage、2 Step」について紹介したいと思います。

・UK Garageとは?

UK Gragaeとは1990年代中期にUKイギリスを中心に生まれました。元はアメリカのディスコ、ソウルなどの影響を受けたガラージ・ハウスをピッチ(スピード)を上げてプレイしたのが発端とされています。それがシャッフルするアップテンポなビート、UKのレゲエ〜ドラムンベースなどのサウンドシステム・カルチャー直系のベースラインと融合し、「スピード・ガラージ」と呼ばれるようになりました。初期のヒット曲には「Double 99 - RIP Groove」や「Roy Davis Jr - Gabriel (Live Garage Mix)」、「Tri Amos - Profeccional Widow (Armand van Helden Remix)」などがあります。BPMやテンションの違いはあれど、シャキシャキしたシャッフルビートに太いベースラインがやはり特徴的ですね。そこにラガMCが乗ったり、ソウルフルなヴォーカルが乗ったり、いろんな表情を聴かせてくれます。

・2 Stepの誕生

それが98年頃になると「2 Step」へと変化し、非4つ打ちのひねりを加えた変則的なリズムにR&Bのボーカルが乗っかるスタイルが主流となります。実際2 StepはR&Bやソウルとの相性が良く、このスタイルの楽曲がUKのチャートを席巻する時代がやって来ます。その代表格がまさに今回のHardwellの楽曲で歌っているCraig Davidです。この頃はアメリカ産のR&BのUK版などには必ずと言っていいほど2 Stepのリミックスが収録され、日本でもm-floやMondo Grosso(大沢伸一氏のユニット)、TOWA TEI、ajapaiと言ったクリエイター達が積極的にこの要素を取り入れ大きなムーヴメントとなりました。どんな音か想像しにくい人にとって、分かりやすい例でいうとm-floの「Come Again」はまさにその2 Stepスタイルを取り入れたヒット曲ですね。とにかくメロディアスな要素からアッパーなMC、攻撃的なベースラインなど、あらゆる要素を包括する事が出来る新しいサウンドとして注目されていました。

・UK Garage、2 Stepから広がった道

しかし、流行には終わりが来るもの、2000年を過ぎると2 Stepサウンドは落ち着きを見せますが、それがUKのストリートのHIPHOPカルチャーと結び付き「Grime」が生まれます。当時はSo Solid Crewや今でも活躍するDizzee Rascalがデビューアルバムでイギリスの最も権威ある音楽賞マーキュリー・プライズ受賞するなどが代表格でした。やがて時代を経て、そのサウンドもここ1、2年で人気が再燃し、そのサウンドに影響を受けた世代がまた新しい音を生み出し、MCのSkeptaがアメリカのラッパー達を筆頭に世界的にプロップスを集めるなど新しい波が来ていますね。同じくUKのベースライン・カルチャーは他にもみんなご存知のDubstepやBassline House、レゲエやダンスホールの要素を取り入れたUK Funky (最近ではDrakeがヒット曲「One Dance」でCrazy Cousinzの「Do You Mind feat. Kyla」をサンプリングした事でも有名。)など様々なサブ・ジャンルを生み出して来ました。そして2010年代にUK Garageも1周し、それらに影響を受けた新世代の活躍によって復活を遂げる事となります。その代表格がDisclosureやShift K3Yといった面々といえます。

 

・今のシーンにも広がるUK Garageの影響

彼らのUK Garageの影響も伺わせるハイブリッドな楽曲はヒットチャートを駆け抜け、またその波は現在のEDM以降のディープハウスやFuture Houseといったサウンドに継承され、様々なアーティストに影響されています。例えばOliver Heldensのレーベル「HELDEEP」やDon Diabloのレーベル「HEXAGON」は如実にその影響が感じられるリリース作品があったり、Jauzと並んで新世代のBASS HOUSEシーンの雄として人気を集めるJVST SAY YESのJustin BieberのRemixや、DJ SnakeのCo-Producerとしても知られるTchamiの作品などがまさにUK Garageスタイルだったりするものも多く伺えます。

・そして大復活を遂げるCraig David

同時に、黎明期からのDJ ZincやZed Bias、MJ ColeにWookieなどといったベテラン達も後進のアーティスト達からの尊敬やサポートもあって今も活躍していて、その中で2 Stepシーンからデビューし、R&B〜ポップ・シーンを駆け抜けたCraig Davidも昨年から少しずつ良質なリリースを重ね、今年いよいよ久々のアルバムをリリースし、大復活を遂げようとしています。Major LazerやKaty B、Sigala、Blonde、Kaytranadaとの話題のコラボレーションが続く中で、今回のHardwellというEDM界のスーパースターとのコラボが実現したのです。自分はちょうど今年のマイアミのULTRAに出演させてもらえる機会があり、楽屋エリアに入る事が出来たのですが、この2日目のお昼に「Craig David」と書かれた楽屋扉を見た時は4度見するぐらいに驚きました!そして彼がまさかHardwellのステージに登場するとは…しかしこれぞ彼の復活劇には最高の演出だったと思います。そしてこのhardwellのコラボレーションによってさらにシーンにこういったサウンドが広まってくれるとオモシロイなと思っています。いかがでしたか?今回でUK Garage、2 Stepがどういったサウンドか分かってもらえると嬉しいです。そしてこのジャンルの名曲は本当に沢山あるし、それから枝分かれしたサウンドを追いかけるのも非常に掘り甲斐があるので、ぜひまた機会があったら紹介したいと思います。

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