COLDFEET Watusi氏を開発アドバイザーとして招き入れ、同氏が考える「現場で必要とされる要素」をすべてクリアしたVUメーターとして発売された『Forma』がパワーアップして帰ってきた。製造・開発は以前にもblock.fmでインタビューさせていただいた、クラフトマンシップ溢れる日本の楽器・音響機器メーカーHAYAKUMO。
結論から言ってしまえば無くてもいいものではあるが、DJやクリエイターが自宅でミックス作業やDJ MIXの制作をする時代だからこそ、その存在意義を改めて知り利用すべきものだと思う。
DAWの高性能化により出番が少なくなるのかと思いきや、今でも音楽スタジオやMAスタジオでは根強く生き残っている。プロのエンジニアは今もVUメーターの存在意義を認めており、DAWのメーターだけでミキシングの作業は行うスタジオは見かけない。プロが利用するものには合理的な理由があり、それを初心者が使わないでミックスするのはレベル1の勇者が木の棒で戦っているようなもの。もしロトの剣があるなら、レベル1でも装備する価値はある。
DJやクリエイターをやっていれば「自分の耳って信用ならない・・」という経験をしたことがあるのではないだろうか。プロのエンジニアも含め、人間の耳はすぐに環境に慣れてしまう特性のため、特に音量の感じ方については曖昧であることが知られている。DJをやっていればどんどんテンションが上がって音量をツッコミコミコミにしてしまうし、トラックを作っていればドラムをあげたらベースもあげたくなり、ベースをあげたらシンセもあげたくなる。結果としてDJミックスを作れば最後の方は音が大きすぎて音が割れてしまったり、トラック制作では出来上がったトラックの音量感が、曲によってバラバラになってしまったりする。
VUメーターはDAWやDJミキサーに搭載されるピークメーターと比べ、視覚と耳で合わせて聴感的な音量感を捉えやすいという特徴があり、様々なメーターの種類がある中でも最も長い歴史をもつオーディオのためのメーター。昨今の高性能なメーターに比べるとシンプルであやふやな部分もあるのだが、最初のリファレンスさえしてしまえば誰でも簡単に扱いやすく、耳と視覚で合理的に音量を整えることができる。言葉で説明するのは難しいが、使い慣れてくると数字ではなく振幅を感覚的にとらえられ、ずっと目につく位置にあることで常に肌感覚的に正確な音量感が把握できている状態になる。
前置きが長くなってしまったが、VUメーターはプロスタジオやDJブースはもちろん、自宅のスタジオにも是非とも装備すべき武器であり、ミックスや曲作りを助けてくれる存在だ。曲を作ったりDJをしている間、一緒にスウィングして踊ってくれてるみたいなのもエモい。
まず一番にあげられるのはデザインの良さ。クリエイターにとって見てるだけでバイブス上がってくるものって重要。サイドのウッドパネルやクラシカルなバックライト付きのメーターには上質感がある。見た目的なデザインの良さと、機材としての使いやすさが両立されたデザインだ。VUメーターは創業87年を誇る扶桑計測器社製を採用。同社のラインナップの中でもNHK規格BTS5703又はJIS C1504に基づき厳格に製作された、高精度、高信頼性のものを使用しており、中身はプロスタジオ仕様だ。フロントパネルには5段階切り替え式のアッテネーターを装備し、どのような環境でも簡単に設定を変更できる。
VUといえば業務用のゴツいものが多いが、DJブースや自宅スタジオのパソコンモニター下あたりにそっと置いておけそうなスリムなサイズ感も嬉しい。このあたりは先代機種からのこだわりポイントだ。
背面側には、レベルの微調整用に左右独立式のキャリブレーションと、音質の劣化を極限まで抑えたというスルーアウトを搭載。自宅スタジオのオーディオインターフェースからスピーカーへのアウトにはさむにも安心。プロのスタジオはもちろんだが、個人宅でも導入のしやすいVUメーターになっている。
2020年1月11日から発送開始。詳しいスペックはメーカーウェブサイトへ。
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written by Yui Tamura
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