Bitwig 3.1ベータ版が公開 非平均律がダンスミュージックの可能性を広げるか

マイクロチューニングで近代の音楽ルールから抜け出したビートを。
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2019.11.30 04:00

Bitwig Studioのパブリックベータバージョン3.1が公開された。BitwigのUpgrade Planが有効であれば、ユーザープロファイルにてベータを入手可能となっている。

これまでもインストゥルメントの複数レイヤーや、自由自在なモーフィング、クリップランチャーと並行して作業できるワークフロー(Ableton Liveのアレンジビューとセッションビューを統合したイメージ)に、3で追加されたモジュラー式のサウンド制作環境「The Grid」など、既存のDAWにはない機能を多く搭載していることで知られるDAWだが、今回の3.1で追加されたNote FX デバイスMicro-pitchでその存在感をさらに高めそうだ。




既存のドレミファソラシドで表現できない音楽を簡単に作れる


Micro-pitchはノート一音ずつをチューニング可能にする、いわゆるマイクロチューニングのためのモジュール。通常のDAWは平均律(もしくは純正律)が前提となっているので、ピアノロール画面を利用してピアノの鍵盤上に存在しない音、例えばドの音はそのままで、ミの鍵盤をたたいた時はミとファの間の音を鳴らすという場合に、毎回ピッチを動かしたり、シンセやサンプラーの設定をするのは大変だが、マイクロチューニングの機能があれば簡単に特殊な音階の音楽を作れる。


非平均律スケールのプリセット搭載、Scala (SCL) ファイル読み込み対応


マイクロチューニングで独自の音階を組み立て、なおかつ音楽的にするには気合がいるが、Micro-pitchには30を超えるプリセットが用意されており、中国や日本の音律やWerckmeister, Harry Partch, さらにシャイニングや時計仕掛けのオレンジ作曲者として知られるWendy Carlosといった面々の考案した音律が含まれているという。特殊スケール界隈では定番のScalaファイルも読み込み可能なので、独自でチューニングをしなくても非平均律での制作ができる。基準周波数も440以外を選べる。




ビートメイカー、DJミュージックだからこその非平均律


マイクロチューニングは民謡や古典音楽、または現代音楽的なアプローチなどマニアックな用途であることが多いが、Aphex Twinがマイクロチューニング機能の開発に携わったKorg MONOLOGUEを利用して楽曲制作をしたことも知られている通り、ダンスミュージックでの活用も十分に考えられる。


音色やグルーヴを重視するヒップホップ/ダンスミュージックでは理論的にはこじつけのような解釈しかできない楽曲がいくつもあり、ビートメイカー自体が理論をわからずに感覚だけで制作しているケースも多い。だからこそ、DJやビートメイカーの制作であまり難しく考えずに自由かつ気軽で感覚的にマイクロチューニングによる独特な非平均律のスケールを使える環境があれば、現代音楽的な難しいアプローチとは違った捉え方で、新たなスタイルを作り上げる可能性があるのではないだろうか。


マイクロチューニングに対応しているシンセ、DAWにはあまり選択肢がなかったが、Ableton Liveの開発陣がスピンアウトしたLive直径のDJ・クリエイター向けDAWにマイクロチューニングが搭載されたことにより、なにか新しいことが始まりそうな予感。


現在、Bitwigの国内代理店ストアにてバージョン1と3へのアップグレードを組み合わせて、通常価格よりも15,000円以上もお得な、数量限定のパッケージが販売されている。こちらで3アップグレードすれば3.1ベータも使えるということなので、気になった方はチェックしておこう。


12月2日追記

国内代理店Dirigentのウェブサイトでもこのほかの機能も含めた3.1情報公開中。

https://dirigent.jp/tutorial/91123/


written by Yui Tamura


source:

https://dirigent.jp/news/90936/


photo:

https://www.bitwig.com/en/19/bitwig-studio-3_1.html





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